不振の「地銀」支援にSBIが名乗りを上げた理由
コメント
注目のコメント
一連の銀行経営の不安定化の記事を見ていて思うことは「銀行の本業は貸し出しであり、自助努力で改善可能」という基本認識が強過ぎるということです。この記事のように新しいムーブメントが今後も次々と報じられるとは思いますが、基本の重要さは抑えておきたいところです。
まず、銀行の本業は貸し出しでありません。銀行の本業はマクロ経済における「資金過不足の仲介」のはずです。経済が成長過程にあり、企業部門の消費投資意欲が旺盛な時は当然、貸し出しが増えます。その時の本業は間違いなく「貸し出し」でしょう。現在はどうでしょうか。貯蓄・投資バランスは企業・家計部門が共に貯蓄過剰です。一方で政府部門が貯蓄不足です。ゆえに「資金過不足の仲介」の本領を発揮する場合、民間から政府に資金が流れるように銀行機能が発揮されるはずです。「銀行は国債ばかり買って本業である貸出をサボっている」という指摘は理論的にはポイントレスと言わざるを得ません。
なお、預貯金ばかりしていて、日本の家計部門は資産形成が巧くない(意欲が足りない)という指摘もどうでしょうか?失われた20年の日本は周知の通りデフレでした。デフレ下で最も増価するのは現預金であり、リスク性資産ではありません。時代に即応して資産形成したからこそ家計部門の預貯金偏重があるのではないでしょうか。もちろん、コンサバな国民性もあるのでしょうが、基本は「マクロ経済環境」です。
そしてその「マクロ経済環境」を受けて本業の性質が変わり得るのが銀行部門であり、ゆえに「機会の限界」から収益も頭打ちだと言われることがあるのです。
これらの基本を踏まえた上で銀行業が軸足を置くべき「次の姿」が議論されるべきだと思います。銀行業が変わるべき岐路に来ているのは議論の余地がないとは思いますが、議論の出発地点を見誤らずに「次」を考える姿勢を大事にしたいところです。数年前の銀行法改正により、事務やITばかりでなく市場業務等も含め地銀間再編における共通プラットフォームの活用が容易になりました。
どこがイニシアチブを握るかに拘らず、ビジネスのスリム化と、地域市場の持続可能性高いサポートを同時実現すべきです。
持続可能性が高い取組みであれば、低水準でも安定的収益を維持しながら「発展的ガラパゴス銀行」を目指してもいいと思います。記事の中に、「今回の動きは、SBIが「地方創生プロジェクト」と呼ぶ提携戦略の第3フェーズにあたる」とある。
第1フェーズでは、SBI証券が地銀34社と金融商品仲介業で提携し、第2フェーズでは、個人間送金やロボアドバイザーなどのフィンテック企業のサービスを導入するプラットフォームを新設してきたとのこと。
一方、これまでの業務提携やサービスの提供と、今回の資本提携・グループ化は大きく次元が異なる。
余程、苦境に立たされた金融機関でなければ、最低限の経営の自由度は確保したいと思うはずだし、それが確保されなければ地元のための「地方創生」ではなく、SBIグループのための「囲い込みプロジェクト」になってしまう。
そうした地銀経営者側の不安をどう解消していくのかが、このプロジェクトの成否を左右することになるだろう。