遺伝子編集が、人間に「痛みからの解放」をもたらす日が見えてきた
コメント
選択しているユーザー
CRISPR/Cas9のデメリットは不可逆的なゲノム編集とターゲット以外の標的を切断してしまう(オフターゲット効果)が高いこと。
実用化には時間がかかるが、RNAを標的にするCas13であれば、オフターゲット効果も低く、高効率なゲノム編集を一過的に変化させることができて、お薬のような感覚で使えるのではないかと思ってます。
注目のコメント
どんな傷を負っても他人より早く回復するうえ、不安や憂鬱、恐怖といった感情を、記憶にある限り一度も抱いたことがないという超人的な無痛覚の人から見つかった原因遺伝子を再現することで、痛みをコントロールできるかも?という未来の話。
とはいえ痛みの存在意義は異変を捉える重要なセンサーなので、痛みからの解放というより、適切にコントロールできるようになるといいと思います。遺伝子編集でキャプテン・アメリカができるかもしれないという方向の誤解だけ助長しそうな感じです。
これは稀な患者さんから、痛みのコントロールの新しい標的になるようなメカニズム(それをコントロールすることで薬ができるかもしれない)が発見されたという論文です。「見えてきた」というほど遺伝子編集で制御することに関して根拠となるデータは論文にはありませんので、その点はご留意頂ければ。
タイトルに有るように個体の遺伝子編集でコントロールするというのは、論文の著者がインタビューで話したとしても、このタイトルは記者が最近の中国の遺伝子編集ベビーの話題などを勘案して、スペキュレーションとして書かれていると思います。
ここで紹介されている論文の内容は、遺伝子編集はほとんど関係なく、FAAH(Fatty-acid amide hydrolase)という、痛みに関係する物質の代謝に関わる酵素の調節に、FAAH自体ではなく、場所的にはその後ろにコードされている遺伝子ではない領域(筆者らはFAAH-OUTと呼称)に見つかったという事で、稀な患者さんのサンプルと、その母と息子の遺伝子の解析をすることによって発見されたという報告です。
その領域は遺伝子(タンパクをコードするエクソン)にはなくて、遺伝子がコードされていない場所にあったため、筆者たちも最初は見つけられなかった違いです。この領域の遺伝子変異は通常、個人向け遺伝子解析で提供されるような商品では検出されず、全ゲノムシークエンスや、特殊な配列解析でしか見つかってこないのです。
FAAHのコントロールが痛みのコントロールの制御に関わるということは知られているようで、FAAH自体をターゲットにした薬の治験は今まであった(論文中では少なくとも2つ引用)けど、うまく行っていなかったとのことです。
そこで、FAAH-OUT を標的にして薬を開発すれば、うまくFAAHをコントロールできるかもしれません。という内容です。FAAHは全身性に役割がある遺伝子なので、それをコントロールするFAAH-OUTを体全部の細胞で意図して編集するというのは現実的には取られないでしょう。
FAAH-OUTの量を阻害する阻害剤やRNA薬が開発されれば、がんの疼痛緩和などこれからますます需要があるかもしれませんので、この発見から開発に乗り出す会社はあると思います。遺伝子編集で痛みを制御できる未来の可能性を紹介する記事。痛みを恒久的になくす試みだけではなく、オンオフできる操作を硏究している科学者もいるそう。
冒頭のスコットランド人女性は、痛みを感じないだけではなく、傷の治りが早く、「不安や憂鬱、恐怖といった感情を、記憶にある限り一度も抱いたことがない」というのが興味深い。また、この女性の持つDNAの変異が、たんぱく質をコードしない偽遺伝子の上にあるという点も。記事で言及された予期しない「トレードオフ」の可能性を含め、臨床応用の前に硏究すべきことは山ほどあると思う。