【解説】アメリカで急増する若者の自殺と「鬱カルチャー」

2019/5/11

21世紀生まれ初のトップスター

あらゆる世代にとって、象徴的なポップスターがいるはずだ。
Z世代にとっては、それはビリー・アイリッシュだろう。今年3月末にデビューアルバム「When We All Fall Asleep, Where Do We Go? 」をリリースするやいなや、大ブレイクを果たした17歳のアーティストだ。
このフルアルバムは米ビルボード・チャートで1位を記録し、1週間にして、アリアナ・グランデに次ぐ年間売上2位へとのし上がった。そして、アイリッシュは21世紀生まれでチャートを制した初のパフォーマーとなった。
ただ、音楽は、彼女が多くのファンを抱える理由の一部に過ぎない。
つまり彼女はその楽曲を通じて、革命を起こしているわけではないということだ。事実、彼女の音楽自体は、明らかにLana Del ReyやLordeなど先輩ミュージシャンたちの影響を受けている。
むしろ、彼女が共感を呼んでいるのは、その「姿勢」にある。
彼女のリリックは、病的さと憂鬱さを行き来する内容だ。ミュージックビデオでも、ポップでカラフルな雰囲気は避け、黒い涙を流したり、背中に無数の注射を刺したり、よりダークなイメージをまとっている。
「私は、もうどうでもいいと思っているキッズに会うのが好き」。今年初め、ラジオ番組に出演した際、アイリッシュはこう語った。そして、続いて「不安や鬱」についても触れ、こう明らかにしたのだ。
「鬱は、私の人生すべてをコントロールしてきたといっていい。これまでもずっと憂鬱な人間でしたから」

ストレスと悲しさの世代

この言葉は、米国のZ世代を表すキャッチフレーズといってもいい。