「独り負け」、第一三共が有望がん薬で反転攻勢
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トラスツズマブ•デルクステカンは、トラスツズマブというタンパク質に、デルクステカンという抗がん剤を接合した薬剤です。
乳がんや胃がんの細胞の表面には、HER-2と呼ばれる抗原が存在することが知られます。トラスツズマブは、抗体と呼ばれるタンパク質で、HER-2とは鍵と鍵穴の関係で特異的に接合することができます。このトラスツズマブがくっつくことで、HER-2が表面にあるがん細胞は免疫機構の攻撃を受けて、細胞死に至ることが知られています。このトラスツズマブ単独で有効性が証明された薬剤です。
今回開発中の薬剤はこれにデルクステカンと呼ばれる抗がん剤をくっつけたものです。このような構造にしておくと、トラスツズマブのおかげで、抗がん剤をHER-2のあるがん細胞にだけ届けることができます。
これにより、点滴して全身投与する抗がん剤に比べ、がん細胞を集中砲火できるため有効性が増し、正常細胞への被害を最小限に抑えられる、すなわち、副作用の軽減も期待できます。
このような構造の薬剤は、ADC(antibody-drug conjugate抗体薬剤接合体)と呼ばれ、実際に目を見張るほどの有効性を示した薬剤がすでにいくつか市販されています。その高い期待値からの動きと考えます。第一三共とアストラゼネカのDS-8201に関する提携について整理した記事です。DSがついているのは2005年の第一三共発足後につけた開発コードを意味していると思いますので、ようやく統合の象徴となる化合物が出てきたか、という感想です。
なお、最初のニュースでもコメントしましたが、一番驚いたのはアストラゼネカが増資を決めたことです。国内製薬メーカー大手の第一三共が反転攻勢ののろしをあげた。3月29日、製薬大手のイギリス・アストラゼネカ(AZ)と抗がん剤で提携すると発表した。
提携の内容は、第一三共が開発中のがん治療薬「トラスツマブ・デルクステカン」(開発名DS-8201)に関して、AZとグローバルで共同開発と販売を進めるというもの。この提携によって、第一三共はAZから最大69億ドル(約7600億円)を受け取る。
ほー。