週に3個以上の卵を摂取、心疾患のリスク増大か 米研究
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こちらで取り上げられる観察研究は、試験デザインが良く、考えうる多数の交絡因子が調整されており、比較的信頼のおける試験です。
当記事で扱われた研究は、卵を摂取する習慣と、心血管疾患リスクおよび全死亡の間の強い相関関係を証明しました。また、卵の摂取量が増えれば増えるほどそのリスクが上がる、用量反応関係を導きました。
これは、コレステロールでも同様のことが示され、コレステロールの量を調整して差し引いて考えると、卵の摂取量とリスクの間の用量反応関係が認められなくなったことから、コレステロールに依存した相関関係があるのではないかと示唆されています。
研究結果の解釈に当たっては、観察研究であるため、因果関係を示したものではないこと、白人と黒人中心に行われたこの研究の結果を日本人に当てはめられるかどうかは別問題、といった限界があります。
しかし、試験デザインの良さと、研究から導かれたクリアカットな結論は、食品から摂取するコレステロールにあまり身体的悪影響はないのではないかとされた昨今の潮流や、現在の栄養ガイドラインに少なからず影響を与えることとなりそうです。補足説明しておきますと、週に卵は2個までなら良いという話ではありませんし、3個以上食べたらいけないとかいう話でもありません。
摂取量に比例して心疾患リスクが上昇するであろうことが報告されています。
血中のコレステロール値が心疾患リスクと概ね比例することが言われており、コレステロールの摂取量と血中のコレステロール値がそれほど相関しないことから、コレステロールの多い卵をたくさん摂取してもコレステロール値が上がらないから大丈夫という話も聞きますが、そうではありません。
血中コレステロール値を悪化させなくても、コレステロールの多い卵の摂取は心疾患リスクだということになります。
「卵は1日1個まで」が都市伝説とされたり、栄養価の高い卵はいくら食べても大丈夫という迷信が流布したり、様々な情報に振り回されますが、
「卵は1日1個未満」くらいが、卵の味を楽しんだり栄養を享受しながら、それほど心疾患リスクを上げない(10%もないくらい)ラインとしては妥当かもしれません。完全に私見ですが。
もちろん卵たくさん食べて運動・筋トレするのが良いと考える方もいるでしょうし、家族に心筋梗塞がたくさんいるから週に1個くらいまでにしとこうとかもあるでしょう。
卵は食べないのに喫煙していて運動習慣もない、では明らかにリスク上昇が勝ってしまいますが、それもあくまで相対的な話ではあります。
エビデンスはエビデンスとして、変なウワサに騙されないようにしながら、個々のケースにうまく使っていただければと思います。栄養疫学的にはとても価値のある研究です。
ただ日本人の一般的な食生活や生活背景を踏まえると、個人レベルではあまり気にしない方がいいと思います。
鶏卵はタンパク質を始めとした栄養素を手軽に摂取できる優れた食品です。
特に高齢者においては低栄養を予防する意味でも一般的に推奨できます。一日一個程度は問題ない場合が多いでしょう。
疫学的な知見を個別の事例に落とし込むのが実学としての栄養学であり管理栄養士の役割のひとつです。