出版と製紙業界からみた震災
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本日、紹介したのは以下の二冊です。
河北新報社著『河北新報のいちばん長い日』(文春文庫)
https://books.bunshun.jp/articles/-/2300
自らも被災した新聞社が、どのようにして、どのような想いで新聞を出し続けたのかの記録。
新聞やメディアの果たす役割について考えさせてくれる本です。
佐々涼子著『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている──再生・日本製紙石巻工場』(ハヤカワノンフィクション文庫)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112196.html
製紙工場や出版業のドキュメンタリーというだけでなく、震災のドキュメンタリーとして貴重な本だと思います。
主に後半は、石巻工場にかかわる人々のドラマが描かれます。
なお、この本は、石巻工場で抄造された紙でできており、電子書籍になることのない本です。
内容はもちろんですが、石巻の紙を感じながら、読んでほしいと思います。
ちなみに、百田尚樹著『永遠の0(ゼロ)』(講談社文庫)、尾田栄一郎著『ONE PIECE』(集英社)なども石巻産の紙でできています。震災のニュースを度々目にしますが、出版業界にはどういう打撃があったのか、初めて知りました。そして、そもそも本を読むときにこの紙がどこのものか考えたことがなかったことに気づかれました。
世界屈指の規模である石巻の製紙工場がどうやって復興したのか。このタイミングだからこそ読んでみたいと思います。長らく出版業界で紙媒体の編集に携わっていましたので、本に限らず、定期刊行物である雑誌を止めてはいけない、間違いなく、遅れることなく、情報を発信し続ける。そのためには当然のことながら出版社だけでなく、製紙工場、印刷会社、流通体制、どれだけの人たちがどれだけのエネルギーをかけているのか。臨戦態勢は日常でした。
3.11の時点で私はすでにコンサルティングファームに移籍していましたが、かつての同僚はみな戦っていました。紙媒体の制作に携わっている夫も、各方面との調整で無事に雑誌を出すために戦っていました。どの業界でも商品でもサービスでも同じだと思いますが、打撃を受けたとか、大変だったとか、そういうことじゃなくて、それぞれの使命なのだと思います。