白川方明・前日銀総裁インタビュー:「バブルの熱狂がなくとも金融の不均衡は蓄積する」「中央銀行は、長い目で見て経済のインフラを作る“黒衣”」
コメント
注目のコメント
白川さんの名前を聞くと人が変わったように感情的になる人々こそ読むべき珠玉の一校だと思います。とりわけ以下の部分ですね。全くもってその通り。議論の余地なし、と思います:
各国中央銀行が目標インフレ率を掲げて過去10年、20年とこれだけ中央銀行通貨を供給しているにもかかわらず、低インフレが続いている現象をどう解釈すべきだろうか。理論が現実に合っていないと考えるのが自然ではないか。
より根本的な問題は、経済の持続性をおびやかす不均衡は物価に表れるという経済観だ。主流派の政策思想の基には、80年代以降のインフレ抑制の努力が物価安定をもたらし、それがマクロ経済の安定をもたらしたという成功体験がある。
その結果として、インフレーション・ターゲティング(インフレ目標政策)の考えが生まれた。物価安定を実現するために、中央銀行に独立性を与えるとともに、アカウンタビリティー(説明責任)を求める仕組みだ。経済の不均衡がすべて物価に表れるなら、実に便利な枠組みであり、ある時期まではうまく機能した。「現実の検証に堪えられる物価上昇率に関する理論がないこと」
これはその通りでしょう。
「主流派マクロ経済学の論理構造は「人々は中央銀行が設定する目標インフレ率に従って予想し、行動する。従って目標インフレ率は実現する」」
私はそれが主流派の論理とするのは違和感があるが、他にないからそういう想定をした理論モデルを試みたということと思います。
「各国中央銀行が目標インフレ率を掲げて過去10年、20年とこれだけ中央銀行通貨を供給しているにもかかわらず、低インフレが続いている現象をどう解釈すべきだろうか。理論が現実に合っていないと考えるのが自然」
今は多くの経済学者がそういう認識でしょう。
「日本の消費者物価は98年から12年までの15年間で累計4%弱下落した。年率にして0・3%の下落だ。しかし、これが原因で日本経済の低成長がもたらされたとは思わない」
「「デフレ脱却が日本経済の最大の課題」「デフレは貨幣的現象」という認識が学者、エコノミスト、マスコミ、政治家の間で広がっていった」
従って、これらは間違いだったということでしょう。
「金融政策によって景気や物価上昇率を最適値にファインチューニングすることに議論が集まりがちだが、通貨や金融環境というインフラを作るという中央銀行の仕事の重要性が過小評価されている」
しかしながら、金融政策は比較的短期のマクロ安定化であり、利益相反を考えれば金融インフラは金融庁のようなところに譲った方がいい。「ブラインダー元FRB副議長が言うように、中央銀行員も人の子だから、意識しないと、金融政策に対するマーケットの反応を通信簿のように受け取ることになりかねない。そうした傾向に染まると、中央銀行は政府・政治からは独立しても、マーケットの短期的な動きに引きずられ、独立性で意図したことが実現しなくなってしまう。」
白川方明前日本銀行総裁が著した『中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年』(東洋経済新報社)。2018年10月の発売以来、刊行部数は1万1000部に達した。この本に込めた思いを白川氏に聞きました。