プレキャスト前提の積算手法確立へ、コンクリートの生産性向上 (1/2)
コメント
注目のコメント
機械式接手。
もし長さ100mの橋を鉄筋コンクリートで作るとき、100mの鉄筋を使うかと言われれば、もちろんそんなわけはなくて。
例えば5.5mとか、ある一定の長さに切られた状態で鉄筋は工事現場に運ばれます。
生コンクリートもそう。一度にダムや橋をつくれるほどのコンクリ―トを打つのは労力的に不可能だし、大量の化学反応熱によってすぐにひび割れてしまいます。
そうなると、実際の工事現場では鉄筋を接続するための措置が必要になるけど、これが「鉄筋接手」と言われるもの。
接手の種類はざっくり4種類に分類され、①ガス圧接、②溶接、③重ね接手、④機械式接手。
日本では鉄道レールの分野で発展したガス圧接が主流で、工学的には溶接の1種類のようなものだけど、区別するために接手の分野では別物として考えます。
重ね接手はコンクリートの中で鉄筋を近い位置に重ねるだけの簡易なもの。
対して機械式接手は、鉄筋と鉄筋の間にスリーブやカプラーと呼ばれる鋼管をかぶせ、この中で何らかの機械的な作用によって鉄筋をつなげるもの。
例えば鋼管の中にモルタルや樹脂をつめたり、ネジ加工してつなげたり、油圧で圧着させたり。
これの便利なところは、鋼管が工場製品のため品質が安定している上に溶接のように施工上のスキルがそこまで求められないところ、そしてプレキャストコンクリートに使えること。
プレキャストコンクリートとは、現場で生コンクリートを打つのではなく、工場でつくったコンクリートのブロックを現場に持っていって、クレーンなどを使ってブロック同士をつなげる工法です。
このとき、ブロックの端っこに機械式接手を忍ばせておけば、鉄筋を繋げるついでにコンクリートの部材同士も接続できてしまうというわけです。
鉄筋接手というのは、強度的には鉄筋よりも絶対に強いことが求められます。
特にに機械式接手は、鋼管径が鉄筋の倍ほどもあるため、剛性や強度はちゃんと施工すれば鉄筋とは比較になりません。
でも強ければいいかと言われればそれは大間違いで、ある断面に強いものが集中すると応力集中などの別の問題が発生してしまうので、注意が必要です。ジョイント部は大事ですね。「溶接」も「重ね」も「ボルト」も、本来弱点となる部分ですが何千何万の実証実験をもとに、ジョイント部で壊れることはないような物作り体制が築かれました。
一つのターニングポイントが阪神淡路大震災だと思います。鉄骨の柱梁接合部で用いられていた溶接のためのスカラップ(切り欠き)や、柱と土台を結ぶアンカーボルトの基準が大きく変わっています。
勿論、鉄道におけるレールも、弱点とまでは言わないかもしれませんがジョイントはいやらしいですね。鉄道レールは電流線の復路として変電所まで電気が流れているのですが、ジョイント間を単管などの導体でつなぐと短絡します。またジョイントにより生じる振動は、当然乗り心地にも影響するため、できるだけジョイントを減らすようにロングレールで設計したいというのが主流です。
今回はプレキャストコンクリートのジョイント(機械式継手)について安田プロの解説付きで勉強することができました。ありがとうございます。
プレキャストにすることで高質化・軽量化が図られるわけですが、意外と改善されないのが運搬荷下し技術だと思います。ダンボールに詰まった果物とまでは言いませんが、それなりに積まれて運搬されますし、どんだけ神経使ってもユニックやラフターによる荷下しでは欠けや割れが生じます。補修を見越した設計が必要なのかもしれません。オーストラリアでは労務費がやたら高いので、規模に関わらず圧倒的にプレコンです。
日本ではプレコン価格がなかなか下がらないという話も聞きますが、高品質化、工期の短縮、建設工事の自動化との相性、BIMの普及などの点から、構造部材に限らずダクトや配管など設備部材も含めて工場生産の比率が高まっていくだろうと考えています。