2018年のノーベル経済学賞、米国人の2氏に
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今年のノーベル経済学賞は経済成長の分野でポール・ローマーとウィリアム・ノードハウスの共同受賞となりました。
ポール・ローマーの研究を一般の書籍でわかりやすく説明している本といえば、ソウルフルな経済学の第2章「なにが経済を成長させるのか」でしょうか。
https://www.amazon.co.jp/dp/4772695141
簡単に説明すると、大学学部レベルの経済学の成長理論(例えばソローモデル)では、生産関数の生産要素は資本と労働しかなく、ともに収穫逓減(増えれば増えるほど生産量が減っていく。)が仮定されているため、経済成長はいずれ定常状態になってしまいます(経済成長の源泉となるイノベーションは外生変数として与えられる)。
一方で、ローマーは、収穫逓増となる生産要素である知識(知識は増えれば増えるほど、生産量は増えていく)を生産関数に入れ込む(内生化)ことで、経済成長が定常状態にはならずに、ずっと伸びていくことを理論的に示しました。
以下、上記の本からの引用です。
「そこで、他のエコノミストは(人的資本ではなく)技術とイノベーションの過程を内生化した。ポール・ローマーはもう一つの画期的な論文で、物的資本ストックと人的資本ストックに加えて、経済における知識の経済のストックを、生産関数に導入した。」
「資本と労働については、収穫逓減があてはまるが、マクロ・レベルの知識についてはそうではない。実に、知識については収穫逓増なのである。」
「ローマーは、彼の元のモデルを拡張し、企業による研究開発(R&D)支出や特許出願を組み込んだ。特許による一時的な独占力は、企業に対し、プロダクト(製品開発)・イノベーションから利益を得る機会を与えるが、特許出願という行為自体は、企業のイノベーションの一部分を公的領域に置くことに他ならない。」
ローマーの論文では、イノベーションの代理変数として、特許を用いていますが、特許の分析をわかりやすく説明している本といえば、やはり伊神先生が書かれた「イノベーターのジレンマの経済学的解明」ですかね。株式市場でもデジタル系企業の時価総額100兆円超える中で、内生成長の話が来るのは旬な感じ。(先日、関連論文読んでてよかったぁと少し安心。村上さんも触れていますが、このイノベーション分野だと代理変数として特許や研究者への補助金プログラムの成果検証、ムーアの法則的な半導体の集積度等々が代理変数として扱われていますよね。) ノードハウス氏の経済成長と温暖化の話は、自身の専門分野であるファイナンスでも関係してくる話なのでこれを機に、勉強する!
事前観測通りマクロ系でしたね
個人的には内生的経済成長論を提唱したローマの受賞は嬉しい。
彼の最大の貢献はそれまでソローモデルによって外生的に捉えられていた技術力の向上、生産性向上(イノベーション)を内生的に説明するモデルを構築したこと。
我が国においても、いわゆる「景気」という短期の経済サイクルではなく、「経済成長」というより長期の果実をいかに増やすのかという本質的な議論を、彼の理論もベンチマークとしつつ、活発化させて行くべきだと思う