【堀江×羽田】本当にやるべきことだけをする合理的人生論

2018/10/5
数多くの著書をハイペースで出版する堀江貴文氏と、芥川賞作家の羽田圭介氏。「大人」だからこそ見えてくる、創作の新しいスタイルや合理的な人生について、「大人ダカラ」で乾杯しつつ語り合う。
トクホの「大人ダカラ」で乾杯
堀江羽田 乾杯ー。
堀江 結構、これおいしいんですよ。
羽田 対談の前にも飲んだら、おいしかったです。丸々1本、飲んじゃいました。
堀江 トクホだそうです。
ほりえ たかふみ
1972年、福岡県生まれ。実業家、株式会社ライブドア元代表取締役CEO、SNS&media&consulting株式会社ファウンダー。現在は、宇宙ロケット開発やスマホアプリのプロデュース、有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」の配信、会員制コミュニティサロン「堀江貴文イノベーション大学校」の運営など、幅広く活躍。
羽田 普段、トクホだからとかあまり意識していないですが、仕事場に飲み物がいろいろあったら、トクホを選んじゃいますね。体脂肪が気になるから(笑)。
──羽田さんは、「1日に3回鶏ハムでも平気」とのことですが、食生活にはどんなポリシーがあるのですか?
羽田 今はそんなに徹底的な管理はしてないです。ただ、毎日同じものを食べたりするのは平気なほうです。
 みんな、僕が筋トレ好きだというイメージがあるようですが、全然そんなことはなくて。太りたくないから、食事や運動に気をつけているだけです。面倒くさいから運動もしたくないけど、太りたくなくて仕方なくやっている。
 食事に気をつけないと、太らないように運動する時間を長くするしかないから、結果的に自由な時間が減ってしまう。僕にとって、食事に無頓着になることは、時間の無駄を生むことになるんです。
はだ けいすけ
小説家。1985年、東京都生まれ。明治大学卒業。2003年、『黒冷水』で文藝賞を受賞。2015年、『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞受賞。最新作は『5時過ぎランチ』。
堀江 一回一回の食事の価値って、すごく大事だと僕も思う。一回の食事をどうでもいいと思っている人が多すぎますよね。
羽田 本当にそう思います。家で食べるときは粗食で十分。その代わり、外食するなら、おいしくて健康的なものを選びたい。そこは多少値段が高くてもいいと割り切っています。
堀江 それ、すごくわかる。
予測変換を活用してスマホで短編執筆
──羽田さんの「超集中力」のインタビュー記事に、堀江さんが「スケジュール管理とかゴミだし、食事は外注したほうがいいんじゃないの」と、コメントされていましたが。
堀江 覚えていないですが、僕、そういうコメントしそうですね(笑)。
羽田 僕は家で、ひとりで小説を書いているだけなので、スケジュール管理を人に任せるほど忙しくないです。自炊も外出が面倒だからしているだけで、自炊と外出のどちらが面倒かの違い。堀江さんみたいなホテル暮らしも憧れますが、都心では予算的になかなか難しい。
堀江 羽田さん、外出が嫌いなら、どこに住んでもいいんじゃないですか(笑)。
羽田 そうですよね。ただ、原稿は座り心地のよい、お気に入りの椅子で書くと決めているので、やっぱりホテルは難しいですね。なんとなく場所に縛られているところはあるのかもしれません。
堀江 僕は、ベッドで寝ながらスマホで原稿書いちゃうので。長い文章も全部、スマホ。
 スマホの予測変換ってすごく賢くて、辞書機能のアップデートも早い。著名人の名前も調べる必要ないですから。固有名詞を調べるのって、めちゃくちゃ面倒くさいじゃないですか。文章を早く書くには、スマホの予測変換がすごく重要。
羽田 堀江さんは、本当に文章書くのが早いですよね。僕は小説を書くのが遅くて、1年に1冊くらいしか出していない。
堀江 ほとんど仕事していないですね(笑)。
羽田 必死でやってるんですけどね 。朝から集中力は無駄に使わないようにして。
 堀江さんが本を出すペースと比べたら、遅いです。でも、1年に1冊分のことだけ考えていればいいから、その程度ならアイデアも浮かんでくる。むしろ、アイデアが枯渇するくらいのスピード感で書けるようになりたいですね。
堀江 僕は毎週メールマガジンを出していて、常に早く大量に書くことを続けている。書籍は口述なので、僕自身は実際には書いていません。でも、メルマガは僕が自分で書いているので、手作業で調合しているような感覚です。
 書評サイトの書評も、スマホから10分くらいで書いちゃう。
羽田 10分!? 
(堀江氏の書いた書評のスマホ画面を見て)結構、長いですね。原稿用紙4、5枚はある。これをたった10分、それもスマホで書くなんて本当にすごい。
堀江 フリック入力がもっと上達すれば5分で書けると思う。書くときはすでに頭の中に構成があるから早く書けるんです。
羽田 小説でも、そんなに早く書けますか?
堀江 短編小説をリレーで書くという企画があって、それも1時間くらいで書き上げました。高校時代のことを書いた私小説で、そのまま連載で書いてほしいと言われていますが、もしそれをやるとしたら1日で1冊分書いてしまうと思います。
羽田 編集者や校閲から構成について指摘はありませんか?
堀江 わかりづらいから変えたほうがいいと言われることは、ほとんどない。事実関係がたまに違うくらいです。
羽田 そのスピードで書いているのに、小説的な表現としての修正の指摘はないんですね。普通はもっと伝わるようにここをカットしろとか、このシーンは丸々書き換えろという直しがあるものです。僕は高校時代にデビューして15年くらいたって、ようやくほとんど直さなくても掲載できるレベルにまで達しました。
多作であることが、正解への確率を上げる
堀江 メルマガでアウトプットしている文章量がものすごく多いというのもあるでしょうね。毎週、短編小説1回分くらいの量は軽くある。
羽田 僕やほかの専業作家より書いている文章量は絶対的に多い。量は質に転じるところがありますからね。
堀江 ある人に言われたのは「とにかく本を出せ」ということ。ピカソが偉大な画家といわれているのは、作品数がほかの著名な画家に比べて圧倒的に多いからだそうで。
 たくさん文章を書くと、その中で意図してない部分で大きな反響を得ることもある。「こういうのが世の中の人たちには刺さるんだ」と、意外に思うことも多いです。
 例えば、本の作り方についていうと、僕のフォロワーは30代、40代が多くて僕の教育論を知りたがっている。でも、僕自身はあまり教育論に関心がないから、今まで語ってきたものをまとめて本にしてくれればいいかな、と。
羽田 そういうシステム、小説にもできないですかね。そういう本と小説は別だというのはわかりますが、頭ごなしに「違うからできない」と決めつけるのもどうなのかな、と。
堀江 方法はあると思いますよ。全体の絵コンテ的な部分を作家が構成して、パーツごとの表現をアシスタントに落とし込むとか。
羽田 うーん。表現の部分をアシスタントにかあ。
ネットの普及が時代小説の書き方を変えた
堀江 小説もジャンルによるんじゃないですか。インターネットが普及して、一番大きく変わったのは、歴史小説や時代小説。
 昔は知識の蓄積がないと書けなかった分野ですが、今はインターネットで情報を簡単に得られる。若い作家がインターネットで得た知識や情報を使って、専門性の高い時代小説や歴史小説が書ける時代です。
羽田 今って、新人作家でテクニックがなくても情報を盛り込むことで、なんとか小説っぽいカタチになる。そういう意味では、資料を読んで情報を入れ込んだ小説の価値というのが下がってきているのでは、と感じています。
 僕自身、今後しばらくは資料に頼らずに想像力だけで小説を書いていこうと思っています。
堀江 昔は知識と教養に高い価値があったけれど、今は価値が下がってきて、コモディティ化している。でも、そこに気づいている人はまだほとんどいないはずです。
羽田 確かにそうですね。電子書籍化が進んでも、結局は過去の作品は過去に埋もれたままで、毎日のように出る新刊は出版した時点での情報を盛り込んでいる。出版業界の現状は全然変わっていない。
堀江 芥川龍之介って、そういう意味ではすごくプロデューサー的な才能があったと思います。「羅生門」なんて、平安時代の今昔物語のストーリーを現代語風に訳したもの。そういう名作は過去に山のようにあるわけで。
 芥川的な手法で過去の作品をリメイクしたら面白いものがたくさんできるはずです。しかも、それは全く新しい作品でもある。
経済からひもとくと歴史がわかる
堀江 僕が今、興味を持っているテーマのひとつが経済史。「経済時代漫画」というジャンルを開拓したいと思っています。
 例えば、日本でカソリックのキリスト教を最初に布教したのはポルトガルから派遣された宣教師のフランシスコ・ザビエルです。でも、その後のキリスト教の布教はうまくいかなかった。その理由は、ひとつには日本の貿易先がポルトガルやスペインから、プロテスタントのオランダに変わってしまったということが大きい。
 17世紀のオランダは株式会社が作られるなど、国力が栄え資金が集まりやすかった。一方で、それまで世界の覇者といわれていたカソリックのスペインやポルトガルは、王政の散財で借金を重ねていた。その結果、資金調達が困難になって、軍事力が弱体化していく。
 こう見ると、歴史は政治や宗教で語られがちだけど、そうではなくて経済で動いているのがよくわかる。
羽田 そういう経済に絡めた話は僕も興味がありますね。経済的な話って、人間の行動原理として自然な流れだから。
堀江 歴史って政治史で考えると不可解でも、経済でひもとくと納得できることばかりですよ。
芥川賞は狙えるものか
――堀江さんも羽田さんも、独自の注目の集め方をされています。自分のプロモーションは本の売れ行きなど意識しているのでしょうか。 
堀江 そもそも芥川賞ってどうやったらとれるんですか? 狙うんですか?
羽田 書いていないときにたまになんとなく「芥川賞でもとったら生活楽になるだろうな」と思ったりしても、実際に書く際はそんなこと考えていなかったので、狙うものでもないですね。強いて言えば、芥川賞のために書いてるんじゃないという資格が欲しいから、芥川賞をとるしかないか、ぐらいのテンションというか。とったら、「小説家は芥川賞のために小説を書いているわけはない」と、堂々と言えるかなという感じがありますね。
堀江 ははは。
羽田 文学雑誌に小説を書いて本を出して、初版が書店にちょっと置かれても、すぐにどけられてしまう。そんな作家が賞をとってテレビに出始めると、一気に本が売れるという効果はあります。その効果が長く続くことはあんまりないのですが。
 認知すらされないと、ほんと初版3000部とか、悲惨なことにもなっちゃうかもしれないので、そこは意識していました。
堀江 初版3000部はキツイですね。
羽田 キツイです。それだけやってて初版3000部って。僕はまだないですけど、周りでよく聞きます。
堀江 僕は、3万部以上でしか受けない。紙の本は、自分の宣伝媒体だと思ってるので、本屋さんで置かれるスペースを確保して、特に大きな本屋さんでは絶対平積みになることを考えると、3万部は必要だと思ってる。
創作のプロセスを全てコンテンツに
羽田 堀江さんは、さっきの歴史小説の知識とか、どうやって得ているんですか?
堀江 こういう対談です。
 「こういうことやりたい」となったら、それに詳しそうな人と対談をセッティングする。対談はイベントとして「ホリエモンチャンネル」やメルマガのコンテンツにします。連載しているようなものですよ。
羽田 取材や対談のような創作の過程を、すべてコンテンツとして商品化しているんですね。
堀江 そう。無駄がないんです。
羽田 そういうプロセスの生かし方は、小説家も学ぶところがありますね。
堀江 何がうまくいくかわからないから、いろんなことを試すしかない。ずっとトライ・アンド・エラーです。びっくりするようなことが、バズったりしますから。
羽田 自分がコントロールできることは、そんなに多くないので、手数を多くするしかないですね。堀江さんと比べるとひとつのことしかやっていない人間に分類されますが、僕も小説家の中ではいろいろ手を出しているほうだと思います。
 最近、自分のデビュー作を朗読するという動画をYouTubeにアップし始めました。本になじみのない人に動画から興味を持ってもらうのが目的です。効果があるかどうかはわからないけど、とりあえずやってみる。
堀江 自分にしかできないことをやる、というのが大事ですよね。仕事も生活も、アウトソーシングできることは全部アウトソーシングすればいい。インタビューや対談も、アバターを使ってやれば時間や場所に拘束されずにすむから、すごく合理的。
 「週刊プレイボーイ」のひろゆき君との連載は、すべてLINEグループでやっています。編集担当者と3人でグループつくって、ネタ出しから対談まで全部LINEの中で完結。ものすごく合理的で早いです。
 どこかに集まったり、移動しなくてよければ、その分、自分にしかできないことに集中できるようになる。そういうことで、より合理的な人生になっていくと思います。
(取材、文:工藤千秋 撮影:竹井俊晴 デザイン:九喜洋介 編集:久川桃子)