宇宙空間、粒子同士は触れずにエネルギーやりとり 初めて直接観測
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「触れず」っていう表現は直感的で分かりやすいが少し曖昧。二つの粒子(水素イオンとヘリウムイオン)が力学的な衝突をせずにという意味だろう。宇宙空間では密度が極めて低いので粒子同士が力学的に直接衝突する確率はゼロに近い。にも関わらず、粒子同士でエネルギー(や運動量)のやり取りをしていないと説明のつかない現象がある。このやり取りはどのようにして行われるか?
理論上はエネルギーの高い荷電粒子(電荷がプラスかマイナスのどちらかに偏っている粒子)が背景の電磁波と相互作用してエネルギーを失う、一方で背景電磁波のエネルギーは増す。次に、その背景電磁波からエネルギーの低い別の荷電粒子がエネルギーを受け取るというプロセスだ(wave-particle interationsという)。今回の研究はこのプロセスを直接計測したとのことだ(※1、※2)。
【※1 Science】
http://science.sciencemag.org/content/361/6406/1000
【※2 JAXA】
http://www.jaxa.jp/press/2018/09/20180907_mms_j.htmlなにやら難し気ですが…宇宙空間にも我々の周りにも電磁場はあり、だからこそ遠隔地と電波で交信できるわけですよね。粒子同士が直接でなはなく電磁場を介してエネルギーのやりとりをしている。比喩的には、人々が直接お金の受け渡しをせず、インターネットで、銀行や仮想通貨を介してやりとりするようなイメージ。それを初めて直接観測というのが驚きではありますが。
宇宙空間でしか観測できない、水素イオン→電磁波→ヘリウムイオンのエネルギー輸送プロセスを実験的実証できたことに価値があるかと思います。
Jaxaのプレスリリースにもありますが、オーロラの発光現象に見られるような、荷電粒子間のマクロなエネルギー輸送現象はすでに確認されています。一方で、今回のような荷電粒子間のミクロなエネルギー移動をより詳細(原理的)に実証したもののうち、水素イオンから電磁波へのエネルギーの移動の計測は過去2例目であり、電磁波からヘリウムイオンへのエネルギーの移動の計測が今回1例目になるとのことです。
既にこういった現象は理論的には予測が出来ていることですので、今回の成果は、宇宙空間に持ち込める計測機器の進化(小型化・高精度化)に伴うものでしょう。そのため、要求特性を満たした装置を宇宙空間に持ち込めたことで実現する計画通りの発見でしょうか。
非接触なエネルギーやりとりを行う事例のうち、音叉は空気振動を、モーターは電磁誘導のようなもっとマクロな現象を介したものになります。
今回のような原子・分子スケールでのエネルギー輸送を確認するためには、移動するエネルギーの絶対値が非常に小さいため、地球上では難しく、粒子衝突の少ない真空、地場や電磁ノイズの少ない、プラズマ状態で荷電粒子が存在する宇宙空間で行う必要があるのはないかと思います。(論文見てオーダーを確認したい。)
◼️Jaxaのプレスリリース
水素イオンからヘリウムイオンへ、電磁波を介したエネルギーの輸送
http://www.jaxa.jp/press/2018/09/20180907_mms_j.html