脳のMRI画像を見ればその人が肥満傾向にあるのかどうかがだいたいわかる
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肥満と脳の関係は様々な研究で示されています。太っていると、「認知の柔軟性」や「欲望を満足させることを遅らせる能力」「視空間能力」および「言語的記憶」が減少している傾向にあるという事実、またBMIが高い人は食欲の増加に関連する右前頭前野皮質が薄めである傾向が確認されたとのこと。
MRI測定する前に、眼の前の患者さん見たら太っているかどうか分かるやんけ、とつまらないことを思ってしまったけど、これは、面白い。
いま、眼の前の人が太っていなくても、肥満傾向が、実はあって、将来危険、とかがわかる、ということなんだと思う。(論文は、MRI画像とBMIに相関がある、と言っているだけで、未来予想の話はしていないように読めたので、これは僕の勝手な予測。)
記事中にPNASへのリンクも貼ってあって好感度高い。
神経科学的に、もしくは遺伝学的に、肥満への対策を考えることができる、ということのきっかけになる。果たしてどういう対策が取りうるか?は、正直良くわかんないけど、「君は気をつけないといけないね」という話ができるのは大きい、はず。面白い研究ですね。以前から色々なことが言われている領域です。
身近なものですと
・早食いや朝食抜きが肥満に関与している。
・睡眠不足やテレビ視聴時間が肥満に関与している。
など。
中枢神経系との関連も様々言われていて、今回は遺伝子との関連や大脳皮質の変化があり、その他の中枢神経機能(個人の性質)とも相関するという報告のようです。
肥満症は先進国で以前より問題になっており、だんだん日本でも、成人でも小児でも、問題になってきています。
治療は食事療法が基本で、運動療法や薬物療法、外科手術、認知行動療法などがあります。
食事療法が基本なのですが、なかなか難しいのにはこの遺伝子や脳の変化も影響しているのでしょう。運動だけではなかなか減量を達成できないとの報告もあり、また外科手術は非常に良好な成績も出てきているものの長期的にはまだ評価は定まっていません(胃の多くをとっても、食欲旺盛な方は時間とともに過食できるようになってしまったり、、、)。
先日も薬物治療の研究(CAMELLIA-TIMI61 study)結果が欧州心臓病学会で報告されていましたが、薬で体重が減るものの、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクは減らせませんでした。体重も5%以上低下した人がせいぜい4割程度でした。
認知症などとも関与していると言われている肥満、「痩せすぎは良くないのよ」と言って自分を甘やかし過ぎることには注意したいところです。
食べることが幸せということには非常に同意しますが、健康あってのものだということを病院にいると痛感する毎日です。
肥満にかぎらず、風疹の予防接種・大腸癌検診・歯周病予防などなど、ご自身やご家族の健康を大切にしてあげて下さい。
追記:
禁煙したことによる食欲増進・体重の増加は、糖尿病の発症率を増加させるものの禁煙が死亡率を低下させる効果の方が強いとのことです。禁煙したら太るから、という理由は禁煙を断念する理由にはならないようです。
とは言え、それがコスメティックな問題だとなんとも言えませんが。多分お肌の状態的に禁煙が好ましいです。(最後の方は医師としての発言というより、なんとなくです)