iPS細胞使った臨床研究申請 血液の難病患者に 京大
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iPS細胞を使った再生医療製品アプリケーションの中でもフロントラインを走る江藤先生の血小板PJ。先月、iPS細胞から血小板を大量に作る最新の方法を見事業界トップジャーナルのCellに掲載されました。(これだけでもサイエンスとしては大きなニュースになって良い事だと思います)
血小板輸血は他の再生医療製品とはまさに次元が違う細胞数を製品として要求される( > 2x10の11乗 )ため、先の論文に発表されたような培養リアクターを使った大量培養技術が不可欠です。
様々なアプリケーションの中でも江藤先生の血小板輸血は実用化が当初からとても期待されている1つで、実用化を見越したベンチャー企業メガカリオンとの共同研究も早い段階から走っています。(メガカリオンという名前は巨核球(Megakaryocyte)に由来しています、変な意味ではありません)
血小板の有効期限は米国5日、日本では4日と短く、2027年には必要量全体の20%が足りなくなるとの試算もあり、また、血小板はもととなる巨核球からちぎれてできる細胞片なので、核がなく、がん化のリスクがないとされるところが実用化の優位性として大きいところです。
今回は、免疫拒絶を起こしやすい「再生不良性貧血」患者さん1人を対象とした臨床研究です。つまり、自分の細胞を用いる自家移植。他人の血小板を輸血できない患者さんだからこそ、iPS細胞の利点を活かす事ができます。
先月のCellの論文に関するサイエンスとしての面白さ、江藤先生のキャラクターがよくわかる記事を以前 Pick したので、興味のある方は是非そちらも見てみてください。https://newspicks.com/news/3194555?ref=user_1181702公式発表がなく、他のメディアでも「〜だとわかった」と表記していることから、独自取材もしくはリーク?だと思いますが、国への申請段階で報道するのは少し早すぎるかな、とも思います。
患者に希望を届ける一方で、申請が差し戻しされれば、あらぬ疑念や絶望を抱くことにもつながりかねません。再生医療関係の研究者の話を聞いていると、臨床研究の情報公開にはかなり慎重になっています。必要以上に希望をもたせたときに、その反動を恐れているからだそうです。再生不良性貧血は骨髄での血球産生が傷害された状態で、赤血球・白血球・血小板のすべての血球が少ない病気です。
先日、京都大学はiPS細胞を用いて血小板を作成することに成功したと発表しましたが、今回はいよいよ患者への応用です。
記事にもありますが、血小板の輸血は赤血球の輸血にくらべて拒絶反応が起きやすいという特徴があるため、拒絶反応がほとんど無いであろう自己iPS細胞はとても良い適応です。
これにより患者さんは脳出血など重篤な疾患だけでなく、ちょっとした怪我による大量出血の危険性にも怯えずにすみますね。
うまくいくことを願っております。