京大iPS治験が本格始動 パーキンソン病、世界初
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高橋淳先生の臨床試験開始のニュースに関して、研究所からの正式リリースを載せさせて頂きます。
公開された研究の流れの資料はこちらですのでより正確に詳しく知りたい方は御覧ください。
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/pdf/20180730_parkinson.pdf?1532937891293
今回のポイントは
・最終的な保険適応を目指して行う臨床試験、治験であること
・iPS細胞研究所の備蓄するiPS細胞ストックを使用すること(自分由来の細胞でないということ)
などがあげられます。
iPS細胞研究所の細胞調整施設(FiT)で備蓄製造するiPS細胞から誘導した細胞を使用します。つまりは自分の細胞ではないものを用いるのですがこれを「他家移植」と呼びます。用いるのはHLAホモストックと呼ばれる適応患者さんに免疫拒絶が起きにくいiPS細胞です。現在日本人のHLAの型の約30パーセントくらいの人口を理論的にカバーするストックまで作製できています。
治験の目的は
(1)パーキンソン病患者を対象に、ヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を線条体注に移植することによる安全性及び有効性の評価
(2)パーキンソン病患者を対象に、ヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を線条体に移植した被験者に対するタクロリムスの安全性及び有効性の評価
誤解されやすいのですが、臨床試験には設定されている目的があり、安全性の確認は重要な目的です。実用化にはステップがあります。着実に前に進んでいっていただきたいと思います。iPS細胞による治療の現時点での主な役割は、身体の壊れた場所の修復、にあると思います。なので、病気の治療は、iPS細胞の活用と根本的な原因に対するアプローチとでセットになると思います。そうすることで絶大な治療効果を発揮する可能性があります。
例を挙げると、心筋梗塞でiPS細胞治療ができるようになれば、原因となった血管の修復(ステント治療、手術)、動脈硬化の原因である高血圧やコレステロールへの治療、そして心筋梗塞で壊れてしまった心臓の筋肉をiPS細胞で修復することで、心筋梗塞発症前の状態に理想郷では戻すことができます。
一方、パーキンソン病の場合には残念ながら原因がはっきりと解明されているとは言えないため、壊れた神経を修復しても原因治療ができません。このため、修復した神経はまた壊れていき、病気の進行は止められない可能性が十分にあります。しかし、iPS細胞の臨床応用自体とても大きなステップですので、大いに期待したいと思います。記事には企業名が出てこないですが、他の公表資料(例えばhttp://www.hitachihyoron.com/jp/100th/inspirations/02.html)によれば大日本住友製薬や日立製作所の名前があります。練られた産学連携のもとで迅速な開発と製品化に期待。
医薬品医療機器等法に基づく臨床開発は医薬品としての許認可と保険収載あと早期承認などのメリットがありますが、用いる細胞株やプロトコルあと細胞調整方法が固定されるデメリットもあるので、今後の技術進歩の見極めが重要です。
あとは競合対策でしょうか。類似の細胞医薬品を中枢神経領域に強いグローバル・メガファーマやスペシャリティ・ファーマか追随する可能性、治験が不要な自由診療モデルを採用し最新技術を取り込んだサービスが後発する可能性もあります。
そう考えると、富士フイルム/CDIが米国基準で確立したウィスコンシン産の臨床用iPS細胞株を用い、時間・コスト優位性の高いCTraS法で分化細胞を調整し、メガファーマとかと組んで米国市場で展開した方が遥かに事業ポテンシャルが高いように思いますが… おや誰かが来たようです。