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会社というのは世の中に価値のあるサービスや製品を提供し、その見返りとしてお金を受け取る装置であって、受身的に惰性で運営し続けるべきものではありません。世の中により大きな価値を提供できるかを常に自問し、そのために必要なアセットを調達するという姿勢を、経営者は求められているはずです。
投資家と経営者の関係について、局所的にはどうしても両者の目線がズレることもあります。それ自体は資金の流動化に対する制約といった固有の事情によるものであり、仕方ないことだと思います。
一方で、真に会社の価値を高めるという点に意識を向ければ、長期的には両者の目線は一致するはずです。そのためにも、ステークホルダーとの対話が重要であり、プロトコルとしてのファイナンス思考が有用になのだと思います。
CFOとは、株主とデットホルダー(日本では銀行が多い)に過去・将来の業績や分析を適切に共有し、株主とデットホルダーから預かった資本を彼らにとって最良と思われる方法で運用して、約定を守りながら、株式価値を向上させるマネジメントチームの一員です。
すなわち、株式価値・企業価値向上にコミットし、結果をもたらすプロフェッショナルでなければなりません。
また、CFOはCEOのビジネスパートナーです。CFOは、事業を深く理解し、持てるネットワークから業界のインテリジェンスを結集し、主に財務的な見地からCFOの考え・分析をCEOに示します。もって会社として最良の経営意思決定ができるようにします。
細かい点では、以下のような役割もあります。
・Devil’s advocate:
多数意見に対してあえて反論を行い、多数意見の妥当性を検証する。嫌な役回りですけどね。ちなみにユダヤの世界では、「全員一致の意見は危ないから、やめとけ」という考えがあります
・Chief Risk-management Officerを兼務:
想定外の事象による損失を想定する。High impact with low probability risksを無視してはいけない
・投資に対する説明責任:
会社にあるカネは、人のカネです。株主やデットホルダーから預かったカネを使う際に、使い方の妥当性に対して説明責任を果たせるようにする。投資であればNPV/IRR分析、経費であればROI分析など
(上記は、私のCFOの師匠の一人である、元すかいらーくCFO・インテリジェンスCFOなどを歴任され、現オプトホールディングスでグループCFOを務める寺口氏からの教えをベースにしています)
以前も書きましたが、
アカウンティングとファイナンスで一番違う部分は、
時間という概念をどう受け止めているかだと思っています。
私自身は以前、銀行と証券、そして今の今は投資事業をやっているわけですが、各業界でその発行体の見方のスタンスが全然違います。
銀行はほとんど過去しか見ません。
いわゆるアカウンティングの考え方です。
ほとんどが純資産ベースで、過去からの蓄積が全てです。
ここでは過去からの延長が今に繋がっています。
いわゆる過去からの決算書の内容を精査して、
融資ができるかどうか判断するものです。
未来については、
半年くらい若しくはせいぜい今期の計画くらいです。
銀行では決算書が正義です。
一方で証券は未来しか見ません。
これは現在は未来から降りて来るという考え方です。
未来を現在価値に割り引いているわけです。
過去がどうだったかなど、どうでも良い話で、
今後3年間の事業計画の利益の蓋然性を精査し、
上場できると思えば、主幹事を引き受けることになります。
証券は事業計画が正義です。
最後に、
投資事業、特にPEは過去のBS、PLをきれいにして、
未来の事業計画をTangibleに行っていくということになります。
どれが良いとか悪いとかではないですが、
上場を目指さない限り、証券会社がかかわることはなく、
必然的に銀行の融資スタンスに対して、
どう対応すればいいかということになり、
将来的なことよりも当面1年さえ乗り切れれば、
銀行は融資を継続してくれるということで、
極めて短視眼的な経営になりがちです。
まあ、しょうがないことですが。
結局、世間的には物事は、
圧倒的に過去を見つめることが多く、
そこに未来からの時間軸を意識することがないため、
ファイナンスを上手く理解出来ない人が
多いのかもしれませんね。
引用
小林 会計は過去の結果としての数字を扱います。だから、基本的に過去志向です。しかも、そこにおいて意思は極力排除する必要があります。厳格なルールが存在して、その手順に則って正当に扱うものです。
一方、ファイナンスは会計と異なり、「この先、未来の会社をどうするか」を、信念をもって説明するのが重要な要素です。
今でこそ現実味を持って語れそうな話ですね。少し前だと下手すると、変人と思われかねないです。僕たちよりもひと世代上の実際ITスタートアップの先人たちは皆さんその道を歩まれているから凄いと思います。
違いを意識していないときに起こりがちなのが、未来に向けた議論をしている中で、「過去n年間10%増を続けてきたから、来年も10%増」といった形で過去の話が混じりこんでくることです。私も予算や中計を作る中で何度もこの思考パターンにハマったことがあります。この場合の”未来”って、その実、何も意思がこもってない、単なる惰性的推測でしかない。
過去の実績は虚心坦懐に見つつも、それはそれとして、未来を考えるときには頭を切り替える必要がある、と自戒しています。
なお、「未来」「志」という部分では、意思を持って未来を示してそこに全力を投じる人もいれば、そうでない人もいる。
だからこそ、数値と言っていることの一貫性(実行可能性)、過去の言動との継続性(誠実性)、失敗に対してのアクション(一貫性を守ることとフレキシブルであること)などをものすごく見る。
人間だから完璧ではなく、全部が完璧なんてことはない。だけど、ただ作っているだけの数値なのか、もしくは保守的に伸ばしているだけなのか、分からない中でのストレッチゴールなのか、道筋は分かっていないがそこに明確な意思があるのか。
未来に賭ける投資ほど、志というか、哲学・生き方にも近くなるように思う。原体験があるかとか、その産業や似た事象の歴史・興亡、そこからどういう学びがあるかとか。そこがなければ、防げる失敗も防げないし、未来を目指して巻き込んでいく力も足りなくなる。
個人的に思うのは、経営者、従業員、投資家、顧客、それぞれの立場を実際に自分で経験してみること。結局、経験がプロトコルを同じにする、同じゴールをにぎること、に一番効果的ではないか、と考えています。
ビジネスにおける共通言語は相互理解も促進すると感じました。
意思のあるプロジェクト、意思のあるファイナンス。政府予算を渡す側、使う側でこれがどれだけ、執行・現場も含めて実現できているのだろうか。
もらう側、使う側に立ってみると、なかなか苦しいところもあります…
↑この一言に尽きる。非常に賛同。
詰まるところ、ファイナンスとは、志の手段であって、ファイナンスありきの志であってはいけない。
でも、目的と手段を履き違えることは往々にしてある