【朝倉祐介】割を食うのは若い人。企業を蝕む「PL脳」とは何か
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注目のコメント
拙著『ファイナンス思考』の概要をお話ししました。
本文をお読みいただければ分かると思いますが、内容的には取り立てて突飛で目新しいことを言っているわけではありませんし、当人は極めてオーソドックスな内容を述べているつもりです。
得てして正論というものは当たり前で凡庸な内容です。ただ、放っておくと目の前の現実に流され、あらまほしき姿からどんどんかけ離れてしまうからこそ、正論を整理し直すことに意味があるのではないかと思う次第です。
なお、本文中でも述べているとおり、「PLは不要だ」と主張しているわけではありません。あくまで、経営レベルでPLの数値改善を目的視するような思考態度に疑問を呈しています。
PLを含めた財務諸表を総合的に見て会社のあり様を捉えつつ、未来に向けた戦略を構想することが、経営レイヤーにおいては必要だと考えています。ファイナンス脳を経営にインストールすべきというご主張に、賛同します。
その上で、High growthインフラ上場企業のCFOをやっていて思うのは、①ファイナンス脳(CF、時間価値、IRR、NPV)、②PL脳(EPS、売上高成長率、EPS成長率)、③BS脳(ポートフォリオマネジメント、最適資本構成、レバレッジレシオ)のいずれも大事です。
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なぜなら、
①ファイナンス脳:株式価値を最大化するうえで、時間価値を考慮した将来CFの総和の最大化が最も重要だからです。したがって、経営判断の一番の基軸は、ファイナンス脳です。
②PL脳:PL指標はマーケットに参加する投資家にとり、簡単に計算できますし、企業間の比較も容易です。マーケットに参加する投資家は、限られた時間の中で星の数ほどある会社(日本だけで3000社超。海外を含めると数万社)を横串で見ることが必要なので、PERのPL指標のバリュエーションを最も参照します。
マーケットが重視するため、経営者もPLを重視します。
③BS脳:BSの構成が、WACCの水準を左右します。WACCの高低は、株式価値の水準を決定します。
また、債権者はBSのレバレッジレシオやバッファーとしての自己資本水準を見て、与信判断を行います。最適資本構成を達成するうえで、債権者の信任を得ることは重要です。この3月末、メディアグループ系出版社の事業責任者からNewsPicksに移籍し、もっとも変化したことは「PL脳」から「ファイナンス思考」への転換かもしれません。
そんな折に、朝倉さんから「ファイナンス思考」を献本頂きました。本書には、私が漠然と感じていた「転換」について明瞭に記されており、体系的に考えることができるようになりました。
そして、このイノベーターズ・トーク連載では「ファイナンス思考」のエッセンスを抽出し、本企画の叩き台となったシニフィアン共同代表3名による鼎談をお届けしたいと思います。
多くのビジネスパーソンがこの「思考」を共有することで、日本の経済活動はもっとよくなると確信しています。