地方発ベンチャーが苦しむ壁、第二のメルカリになれない理由とは
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まとまったいい記事だとは思うのですが、筆者の主張のように地銀が地方のスタートアップの育成役たれ、というのは心意気や意義には異存はありませんが、やはり違うようにも思うのです。
それは筆者の言うような人材の問題ではなく、地銀の主力業務であるデットファイナンスと、ベンチャーの資金調達手段であるエクイティファイナンスとは全く異なる世界のものだからです。
デットファイナンスの世界は基本的に低い金利であっても、長期にわたってお付き合いしていくことが何より大事で、地銀の存在意義はまさにそこにあります。
一方エクイティファイナンスというのは極端な言い方をすれば「会社の切り売り」であり、部分的な所有者である資金調達先への利息や返済義務がない代わりに、企業価値を向上させ、いつの日か必ず「イグジット」を迎えねばなりません。
因みに現在のアメリカのイグジットの80%以上はM&A、日本でも既に50%を超えています。
ある意味、そこまでの限定されたお付き合いだと言うことです。
元々利幅の薄いデットファイナンスの世界では、原則として赤字企業への融資は許されません。
一方リスクをとって大きなキャピタルゲインを狙うエクイティファイナンスの世界では、企業価値向上につながる先行投資は大いに推奨されます。
実際あのメルカリでさえ、34億円の赤字で上場していますが、デットファイナンスの世界では、破綻懸念先に分類されてもおかしくないでしょう。
つまり元々違う価値観で、異なる世界にいる人達をゴッチャにしてはいけないと思うのです。
やはり餅は餅屋です。
地方銀行はVCや投資銀行の真似をするのではなく、彼らには出来ない、長く親密なおつきあいで、もっと長い目で地元企業の応援団であるべきではないかと私は思うのです。本論に限らず日本でよく議論される、地方スタートアップ活性化、という概念自体の実現可能性を、諸外国の事例も踏まえて点検してほしいと思います。
それが実現されている例は世界では皆無に等しいですし、それに行政が躍起になっている国も寡聞にして聞きません。
例外は米中インドの三大国です。理由は単純に大きいからです。一級都市が10以上あるのはその三大国のみです。故に中国は北京にも深圳にも、インドにはデリー首都圏にもバンガロールにも、米国ではテキサスやNYでも、複数に分散したスタートアップエコシステムが成り立ちえます。
しかしその他は歴史的な事情があるベルリン等ごく一部を除き、各国の首都広域圏のみにスタートアップエコシステムが存在します。
なおリスクマネー不足、というのはこの手の議論でいつも言われますが誤りです。投資機会があるのにマネーが来ない、という状態はあらゆる分野において古今東西ありえません。アビトラージ機会は瞬く間に奪い去るのがマネーのネイチャーというものです。
なお、だから諦めましょうという議論ではありません。グローバル経済とローカル経済とは全く別です。地方でメルカリを育てる必要も実現可能性もありません。ローカル経済に合理性のある新産業を担う新規企業をはぐくむ事は可能であり、やるべきです。一般的な語義のスタートアップと混ぜた議論はミスリーディングだというのみです。大山さんの話、NPでたまに見かける「企業の危機に際しては、メインバンクは債権放棄をせよ(100%減資の前であっても)」の議論に通じる気がします。
というのも、株式価値と企業価値、エクイティのデット、アップサイドありと金利商売、本質的な部分でこれらの区別がついていない人が、この手の主張をされるからです