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●概要
内容が面白いのもありますが、人として惹かれるのは大嶋光昭さんが挫折を味わってから。人として何が変わったのか?というドラマ。ここに僕は心を揺さぶれました
●大嶋光昭さんの挫折
(研究室を)私は一度追い出されました。実験が遅かったこともあって、研究管理部門へ異動させられたのです。研究所の予算管理やプロジェクト管理をする、いわば事務職です。研究職の道が閉ざされたとわかり、もう、奈落の底に落ちたような心境に陥りました
●挫折して変えたこと
しかしそこで腐らず、這い上がるためにはどうしたらいいかを必死に考えたんです。たまたま隣りに図書室があったこともあり、5時に仕事を終えてから、毎日そこで勉強しようと決めました。目標として、新しい技術分野を月に1つ習得し、必ずその分野の新しい発明をして、特許を月に1件出願する、というアホなことをやりました。それを3年くらい続けました
●人を巻き込む
本を読むだけではなく、読んでアイデアを引き出し、それをその技術分野のトップの人にぶつけました。当時の松下電器産業には1万7千人の技術者がいたので、そのなかでもトップの人のところへ夜8時くらいに行って、「すみません、この技術、私はこう変えたらよくなると思うのですが」って、相手が帰ろうとしているところに聞きに行くわけです。時には11時くらいまで(笑)
●とにかくアウトプット
ただ教えてもらうわけではなく、アイデアを提案するのです。あちらとしてもアイデアを持って来ているから、「ここはこうした方がいい」って教えてくれるわけです。それを毎月毎月続けました。かなり大変でしたが、当時の特許出願の記録を見ると、年に17件ほど特許を出していました。それがあったから、ほかの分野、たとえばジェットエンジンや原子力発電の発明でもできるようになりました
●ぼくはこう思う
「世界一、世界初だけ」に取組む、「ソーシャライズしない」、「出口を変える(つくる)」など他にも金言タップリ。こういう方が日本の産業を支えていると思うと誇らしい気までします。
そして、研究者の道を閉ざされてしまったと思うほどの挫折からガラリと変わった決意と行動が類まれな結果を出した。ということは誰にでも、どんな仕事にも当てはまる生き方のように思います
必要な研究と、何が出てくるか分からない研究というのは別物だと、組織の説明を読んでいても思う。
そして「イノベーターの番付」も面白い。なんというかこういうのを作る自由闊達さとかがそもそもとして必要なのだと思う。
下流まで付き合うことは自分にとって悪でしかないと勝手にイメージしていたけど、出口がわかるという意味では非常に重要な経験なんだと考えを改められた。
>> その際重要になってくるのが出口戦略です。入口のイノベーションは、時期はいつでもいいんです。偶然生まれるから、タイミングというものはない。でも、出口はタイミングが大事です。早くても遅くてもダメ。これからイノベーションを起こそうという人は、入口と出口の見極めを心がけた方がいいと思います。
見立ての力について
>> 私の場合の目利きは、パターン認識です。いろいろな成功パターンも失敗パターンもアタマに入っていますから。成功事例は10ですが、それに加えて30程度の失敗事例があるから、40ほどの事例のパターンがアタマに入っているわけです。この40事例のなかのそれぞれに、「あそこでこうしたら成功した/失敗した」というパターンが10件あるので、合わせると400くらいのパターンがアタマに入っているのです。
なのでパッと見て、「これはあのパターンだな」ってすぐに判断できます。要はリンク力です。「これはあの時と一緒だから危ない」とか、パッとわかるので目利きができる。
大嶋さんもすごいのですが、二つの研究所をあえて併存させたパナソニックという会社もすごい。偉大なる経営者の作った会社は、その仕組みもやはり偉大なのですね。