【辻一弘】自分で師匠を見つけ、独学を極める方法
コメント
注目のコメント
「真に道を究めんと欲すれば師につかねばならぬ」というのは、戦前の日本人ムスリムの言葉で、彼は中国に渡って中国人ムスリムのイスラーム学者に弟子入りしました。良師を見出してよく学ぶことができるのも才能の内です。
今では様々な名前の大学、学部、多くの分野の専門学校がありますが、真に道を究めるというのは、実際のところ、何かの学校に行って資格をとればできるというものではありません。
1946年に手塚治虫が『新宝島』をはじめストーリーマンガを次々に発表していった時、刺激された全国の少年少女が手塚に手紙を送り、自分たちが描いたマンガへの助言を求めました。その中には、富山県の二人組の高校生、藤子不二雄もいました。手塚は多忙な毎日の合間に多くの返事の手紙を書き、助言を与え、彼らの上京後の生活や出版社への紹介まで世話しました。
手塚は学校の先生でも大学教授でもありませんでしたが、これから日本に現れるマンガ家たちの師であろうとする強い意志がありました。もちろんそれは非常に面倒くさい手間のかかることでもあります。日本のマンガは、手塚が少年少女たちの師であろうとする意志を持っていたことで、今日まで発展することができました。
ディック・スミスは、『リトル・ビッグ・マン』や『ゴッド・ファーザー』、『タクシー・ドライバー』のメイクを手がけたことで、ハリウッド映画のメイクアップ技術第一人者となり、メイクアップ技術者としては唯一アカデミー名誉賞を受賞した人でもあります。そして、辻一弘さんやリック・ベイカー(数多くのエイリアンや狼男、猿の惑星、マイケル・ジャクソンなどのメイクアップ技術者)の師であったことで、映画のメイクアップ技術をいよいよ盛んならしめました。彼が後続のメイクアップ技術たちの良師であったこともまた、彼が第一人者であったことを示しています。「一度作ってうまくいかなかったら…」のくだり、耳が痛かったです。そして辻さんは、何度も作り直すことが、たぶん苦ではないんだと思います。もちろん大変だし生みの苦しみはあるでしょうが、放っておくほうが嫌というDNAなんでしょうね。
逆に私は、うまくいきそうなことに移るほうが自分にとって自然なDNAです(怠惰も含まれていますが)。だから辻さんの性質そのものが、この道を極めた要因の一つなのですね。圧倒的な実績/価値を創出してきた方に共通する特徴が、「行動力」×「失敗の仕方、失敗からの学び方」だということを改めて強く印象付けられました。
デジタル時代の即レス・フィードバックと異なり、アナログであるからこその相手や他者への想像力が育まれる。全く同感です。今後もますますデジタル時代になるからこそ、アナログの機微が大差を生むと信じています。