【暦本純一】SFにルーツ。人間拡張研究者が描く未来とは
コメント
注目のコメント
人間拡張=ヒューマンオーグメンテイションの研究で第一人者である暦本純一さんへのインタビューです。
暦本さんが世界でいちばん対談してみたかった人。それは、SF作家の大家、ウィリアム・ギブスン氏でした。
攻殻機動隊や映画「マトリックス」の元ネタになったと言われる「ニューロマンサー」を書いたのがギブスン氏です。AR、VR、ロボットテクノロジーなどの研究者は、こんなにもSFにインスパイアされているのかと認識し、最近、改めてSFを読んでいます。科学記述の進展において、SFが果たす役割はどれほどのものか、暦本先生へのインタビューの構成を担当しました。
それにしても、サイバーパンクの創始者であるギブスンと、ヒューマンオーギュメンテーションを研究する暦本先生の対談とは痺れます。暦本先生の多岐にわたる研究についてのお話のなかで、一番気になったのはamazon echoを身につけて日常生活を送るというもの。そうすると、目の前にいる暦本先生にではなく、姿が見えないAlexaに話し掛ける人がいるわけで、そうすると本人、話し掛けた人、そして姿こそ見えないけどそこにいるAIという、不思議な関係性が表れるのだとか。あまり知られていませんが、iPhoneのコア技術であるマルチタッチスクリーン特許は、暦本さんの研究論文と特許出願によって無効と判断されたのですよ。
2011〜12年頃、マルチタッチスクリーン技術の特許性は、スマホやタブレット型端末の開発・商品化を進めたいメーカーの間で大きく注目されていました。特許を保有していたのはアップルで、この特許が本当に有効なら、世界中の後発メーカーは莫大なライセンス料をアップルに支払わなくてはなりませんでした。
そこでいくつかのメーカーが、「その特許は無効だ!」という裁判を起こしました(アメリカの話です)。私はその調査を依頼されたのですが、膨大な裁判書類に目を通していると、”Rekimoto Patent”とか”Rekimoto Literature”という言葉が頻繁に出てきました。そして最終的に「レキモト特許・レキモト文献を見れば、本件特許技術は自明(容易に想像できた)。したがって無効」という判決が下されたのです。
“Rekimoto”って日本人のような名前だなーと思って調べてみたところ、それが2001年の暦本さんの特許出願と、2002年に暦本さんが書かれた「スマートスキン」論文であることがわかりました。アップルの特許無効の証拠として、サムスンがこれらの文献をアメリカの裁判所に提出したのです。
後日、たまたま暦本さんの講演会があったので伺ってみたところ、拡張現実のお話をなさっていました。2012年頃だったと思います。何より印象的だったのは、暦本さんがとても謙虚であられたことです。技術の進歩は先人たちの積み重ねによって可能になるもので、独占するべきではない、とおっしゃっていたことが、特許訴訟をたくさん見てきた私には本当に衝撃的でした。