ベンチャーキャピタルから起業家へのパワーシフト
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ベンチャーキャピタリストと起業家は、大原則としてより大きな価値を生み出そうとする点で共通の利害関係を持ちます。ただ、大きくなったパイをどう切り分けるかという側面においては、どうしてもゼロサムゲーム的な部分もあります。
毎週投資委員会を開催して多くのスタートアップの情報を蓄積しているVCと、初めて起業に挑戦する起業家の間には当然、情報の非対称性があります。VCと起業家のパワーバランスを痛感するのはこのような局面です。
この点、両者と同じ利害を共有しつつも両者の間に介在してバランサーとなり得るのが、エンジェル投資家ではないでしょうか。理想論としては、両者の間であまりにアンフェアな関係や誤解による衝突が生じぬよう、調停役としての機能を果たすことがエコシステム全体の中でエンジェルに求められる役割ではないかと考えています。
シリコンバレーでVCから起業家へのパワーバランスが進んだ背景には、オープンなカルチャー、資金流動性、シリアルアントレプレナーといった要因に加え、経験あるエンジェル投資家の存在も一因にあるのではないでしょうか。
この点に関しては、日本も徐々に変わりつつあると感じる次第です。フィルの「ウェディングプランナーか結婚カウンセラーか」の例えは、彼のベンチャーキャピタリストの在り方を上手に表現していると思います。10年企業ではなく、100年企業を創ることに関わろうとする考え方の根底にあるのだと思います。
『私たちがベンチャーキャピタリストのことを語るとき、よく「VCとはウェディングプランナーではなく結婚カウンセラーだ」と冗談を言います。
これは「VCとは、3カ月で何かを成し遂げるような仕事ではないし、結婚式そのものが重要なのではない。それよりも、その後10年の結婚が問題になるのだ」という意味です。』今回も素晴らしい内容。しかしタイトルが適切じゃないのが残念…
「リアルシリコンバレー」と題しベンチャーキャピタルの今を知るという特集なのに、この「起業家へのパワーシフト」はフィル本人が言うように30年ほど前から起きている事なのです。「今」ではなく。
どちらかというと次以降のパラグラフタイトル「VCは結婚カウンセラー」あるいは「ベンチャー投資4%の法則」をタイトルに持ってきたほうが適切でしたね。
いずれも私自身VCファンドを運営していて日々痛感する事です。
