宇部興産 ポリエチレン製品で所定の検査せず出荷
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「工」という漢字の由来は、天と地を結ぶ人間の営みを表す、と言われています。
素材メーカーの使命は、天、つまり自然から与えられた材料を素材に昇華し、工学という人間の営みに落とし込んでいく最初の窓口になることであると、私は同業者として考えています。
その意味で、いずれの業種でももちろんそうですが、化学・素材メーカーの不正は、どんな理由でも、あってはならないことと私は思います。
自戒・自律の念も込めてポリエチレンと一言に言っても色々ある。
ポリエチレンには,製品密度から低密度品(0.915~ 0.925 g/cm3)と高密度品(0.945~0.965 g/cm3)がある。
製造法からは
高圧法(1300~2000 気圧),
中圧法(3~ 300 気圧),
低圧法(1~数気圧)がある。
重合反応形 式としては
ラジカル重合(重合開始剤として酸素や過 酸化物を使用)と
イオン重合(金属酸化物触媒,チー グラー触媒,カミンスキー触媒を使用)がある。
この 組合せから代表的なポリエチレンの種類として
LDPE(高圧法低密度ポリエチレン,ラジカル重合),
LLDPE (直鎖状低密度ポリエチレン,中低圧法,イオン重合)
HDPE(中低圧法高密度ポリエチレン,イオン重合)が ある。
このうち、宇部興産のHPによると、宇部丸善で作っていたのはチューブラー法によるLDPE。
ケーブル被覆用にはコンタミ防止や加工性が優れたものが望ましいとのことから、この辺りの検査がどのように行われていたのか?というポイントが問題になっているということだろうか。
ポリエチレンの細かな違いは下記記事が詳しい。
http://www.chemistry.or.jp/know/isan037_article.pdf形式上も、実質上も、許される余地はない。社長の説明はおかしいし、危機感が感じられない。
「取引先と取り決めた検査」だから、法定検査ではなく、契約上の任意検査なのだろう。
取引先メーカーの納入時の受入検査を、素材メーカーの検査完了票に代えたとしても、取引先メーカーでは、検査完了票の発行プロセスの正しさを確認する取引先メーカーによる立入検査をしているはずだ。取引先メーカーの完了検査票を無条件で信じることはしない。工程検査や品質検査に関する素材メーカー側のプロセスを必ず検査する。なぜなら、品質不良の素材の使用したことによる、完成品の品質・機能は取引先メーカーの責任だからだ。
ひょっとしたら、この取引先メーカーによる、素材メーカーの立ち入り検査も省略されているのかもしれない。さらに、素材メーカーとメーカーとの間に、「了解」があったのかもしれない。あるいは、完成品の品質・機能に影響を与えない「無意味な」検査だったのかもしれない。