スイスのネスレ、米高級コーヒー店ブルーボトルの過半数株式取得へ
コメント
注目のコメント
一年前から私も関わってきましたが、スタバとは全くオペレーションが異なる業態。マンパワーを駆使してより新鮮で美味しいコーヒーを、時間をかけて丹念にドリップして淹れるのがプルーボトルコーヒー。ネスプレッソやネスカフェ・ドルチェグスト、ネスカフェ・レギュラーソリュブルコーヒーは、新鮮な焙煎直後のコーヒー豆を真空パックカプセルやインスタントコーヒーの粒に閉じ込めて酸化しないで簡単にシステムマシンで美味しいコーヒーを楽しめるようにしたもの。
プルーボトルコーヒーを傘下に入れることで、丹念にドリップして淹れるコーヒーを、ショップや自宅で楽しめるという新しいコーヒー体験をネスレは提供する。「スイスのネスレは米コーヒー店チェーン、ブルーボトルコーヒーの過半数株式を取得することで同社と合意した。高級コーヒー需要の高まりを受け、ネスレはコーヒー市場での首位固めを狙う。」(記事引用)
速報記事の特性上致し方ないのだろうが、ネスレ側の立場でだけ記述されているのでブルーボトル側のメリットとデメリットを考えたい。巨大資本の傘下に入ることで、ビジネスシステム(調達、IT、人事など)を整えられること、出店を加速する資本を得られるメリットに加え、ネスレが展開する業態と相乗効果を発揮できる余地もあるだろう。
ただ、ブルーボトルのブランドストーリーを考えると、このM&Aはデメリットの方が大きい気がする。ネスレといえば、インスタントコーヒーの代表される「ファーストウェイブ」を牽引してきたブランド。たとえは適切でないかもしれないが、トヨタやVWが、高級スポーツカーメーカーを買収する感じに近い。トヨタやVWという名前は、高級スポーツカーにとっては邪魔でしかないように、ブルーボトルにとってネスレは、ふつうに考えれば「ないほうがいい」(ネスレにとっては「あったほうがいい」が、ブルーボトルのクラス感を希釈しないマーケティングは簡単ではない)。
メーカーブランドのネスレと違って、スターバックスはショップブランドなので、同じ次元で議論できないが、スターバックスが買収してきたお茶ブランドのTAZOやTEAVANAを見ても、スターバックスというブランドの傘下の1ラインナップ化しており、スターバックスのメニューの厚みはつくれても、TAZOやTEAVANA自身のブランドストーリーとしては、本物感を希釈(ないし喪失)していると思う(コーヒー屋のお茶のむつかしさ)。
外野からの勝手な願いに過ぎないが、ブルーボトルには、「サードウェイブの雄」として、グローバル資本主義とは違う、21世紀型のやわらかいネットワークづくりのファシリテーター役を期待していた。個人商店に近いコーヒー好きが、お互いをリスペクトし、顧客も共有するコミュニティを形成するという世界観は、グローバル市場でひたすら成功しようとするファーストウェイブ(ネスレ)やセカンドウェイブ(スターバックス)とは違う新しさがある。サードウェイブ物語の第2章は、ブルーボトルが学んだ日本のコーヒー文化の継承者たちの中から、紡がれていくのかもしれない。まあ正直言ってコーヒー詳しくない私からすると味の違いは全くわかりませんが、好きな人には得難い体験を提供してるんでしょうね。ネスレの戦略はすごいです