大前研一「FinTechの本質。新しい『信用』のルールが経済を数倍に拡大する」
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通貨と国民国家の結合が解きほぐれていくと、何に依拠した価値なのか、裏支えする信用がより重要になっていくのでしょう。これは個人にも紐づく話で、今後はどれだけ資産を有しているかよりも、どれだけ信用力を有しているかの方が、より重視されるようになると思います。
この点で面白いのが、中国のアリババグループの会社が運営するSesamiCreditです。個人のSNSでの言動や、アリババグループ内のサービス内での評価、決済情報をベースに、個人をスコアリングするサービス。
スコアが高いほど、サービス利用上の特典を得られたり、一定のスコアがないとサービス利用が断られるそうです。かつてのKloutを彷彿としたが、決済データにも紐づいているあたりが特色でしょうか。
面白い事例としては、出会い系サービスでもSesamiCreditのスコアが一定基準に達しないと、異性から足切りされてしまうそうです。
個人のネット上での行動が全て実生活に反映されてしまうわけです。これ、凄い世界じゃないでしょうか?
個人的にはこうした信用力のインフラのようなビジネスにずっと注目していただけに、非常に衝撃でした。
リアルの生活であれば、時間の経過に伴い忘れられる過去の出来事がネット上で固定化され、評価に反映されてしまうのは、ネット時代における新たな格差の源泉になり得ます。遠くない未来、「信用格差」が大きな論点になるのではないでしょうか。
またSesamiCreditは、アリババほど広範に個人の経済活動を押さえた会社だからこそ為せる事業だとも思います。この辺り、将来的には国内企業が国際的競争力を保つ上で、あるいは自国民のデータを守る上で、独禁法の意義についても再検討が必要になると思います。放っておくとかなりまずいことになる気がします。
この点、さすが中国は「資本主義」の国と感じる次第です。地域社会で物理的に距離が近い関係性においては昔から「信用」こそが暮らしの安定性や豊かさを支えてくれています。これはリアルに会う機会が多く、おそらく関係も5年10年単位で切れないと思われる相手とであれば、気軽にモノやコトの交換もできる安心感からくるものと思います。
通貨は見知らぬ相手や距離の遠い相手と価値交換する際に便利ですが、フリーライドされたり騙されたりというリスクも高く、正直者が馬鹿を見るような部分もあります。
フィンテックがその中間あたりのところで緩やかな広い信用を支えるてくれるようになるといいなと思います。
FBやNPにおける「いいね」も別の価値とは明確には交換できませんが、一定の信用性を付与するものですよね。
実際に最近「NPで見て連絡しました」的なお話をいただくことがチラチラあり、大変うれしく思っています。「発行されるお金の量は増え続けているわけですが、国家がつくり出してきた「通貨」という概念も最終的にはいらなくなる、というのがFinTechの本質です。」
ソブリン通貨の利便性を鑑みると、仮想通貨がそれに置き換わることは先進国においては非常に考えにくいです。
中央銀行は仮想通貨に対して通貨発行権を持っていません。よって仮想通貨を通じてマネタリーポリシーを発動することが非常に困難です。仮想通貨は金利市場ができはじめた程度で、整ったイールドカーブが生成されているわでもありません。なので仮想通貨の信用が非常に高くなったとしても、金融システムの安定性を鑑みると、ソブリン通貨及び中央銀行システムは必要だと思います。将来仮想通貨の信用が上がり価格が安定しイールドカーブが作られたとしても、物価の安定や政策を表現できない金融システムが支持されるのでしょうか。
もちろんデジタルJPYのような構想は支持されますが、これは仮想通貨ではなく中央銀行の負債であると考えられることからソブリン通貨にカテゴライズされるでしょう。
しかし、開発途上国では話が全く変わります。自国通貨よりもビットコインのような仮想通貨の方が信用があり、また決済手段としての利便性(スマホがあれば送金、決済できる)などが重要な段階であれば仮想通貨が自国通貨に置き換わる可能性は十分あると思います。この場合は、金融政策の自由度を放棄して、まずは物価の安定や決済手段としての通貨という側面を重視したと言えるでしょう。