日揮が異色の「復職」社長に再建を託すワケ
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退職済み、高専卒、数度の社長就任要請固辞という石塚新社長の就任。エリート集団日揮にあって、かなりの赤字転落の危機意識がこの人事を生んだ。
土下座に近い形での会長による就任要請と妻の一言が、頑固親父を動かした。直感的に再建への期待が持てそう。高専卒業で65才ということは、入社時は本当に溶接などの現場作業から始めて、少しづつ管理側にシフトして数多の海外工事現場でSite Manager等を歴任してきた人なんでしょう。
こういう経歴の人の言うことには「本当のたたき上げの経験」という名の重みがあるから、工事業者からは勿論のことオーナーサイドからも非常に厚い信頼を得ることが多い(欧米は日本よりも技能工の社会的評価が高い)。
恐らく、癖のあるアメリカの工事業者やオーナーと対峙するにあたり、今の陣容では押し切られるかもと思って石塚氏の招聘につながったんだと思う。
良い意味では、退職者を受け入れる日揮の懐の深さを感じるし、穿ってみればリーディングカンパニーである日揮でさえこの手の人材は不足している、ということ。
(追記)
エンジニアリング会社は、現地工事をしっかりこなしていかないと足腰が弱くなり、総合力が落ちる、というのが個人的見解。EPCで一番リスクが高くコストや工期に影響を与えやすいのが工事だからです。
リスクを低くするためにJVやコンソーシアムベースに契約して、工事を自らから外すこともできますが、これをし続けると肝心の「工事」の査定能力が落ちていきます。そうすると、コンソーシアム相手や現地工事業者との見積価格や追加コストの交渉の際に切り込んで行くことができず、見積でも実工事でも支障がでできます。
この観点から考えると、今回の人事は日揮は現地工事を今後もしっかりと抱えていきたい、という意味なのかなと推察します。是非、風鎮さんのコメントが読みたい記事ですね。
以下、私見です。
「石塚氏に言わせれば、会社やPJをじっくり分析してもわからない人もいれば、さっと見ただけでわかる人もいる」
この分かる/分からないを言葉にしようとすると非常に難しい世界。思いつくのは「契約」と「工程とコストの関係」を読み取るノウハウかなと。
契約
昨今のインフラPJは大型化・複雑化してきています。それに伴い顧客側も契約スキーム、個々の契約条件によってリスク低減(回避)を図ります。契約条件では単に売価だけでなくファイナンス知識を有する時代です。大型PJでは引渡後一括入金ということは稀ですから、いかに前受金を定期的に受領できる契約を獲得し、キャッシュポジティブ(キャッシュアウトよりインが上回っている状態)に工事を進めることができるかが肝要です。
工程・コストの関係
これはかなりの経験・ノウハウ・職人芸的な技術を要します。PJマネジメントを担う人間(所謂プロマネ)が、或いはPJ損益管理を担う人間が、それを理解できなくなっている可能性があります。(伝承不足:工程とは図面作成・承認も含む)
巨大な建設PJでは、通常スケジュールや工程・予算などがPrimaveraのようなPJマネジメントソフトウェアで管理されているはずです。(たぶん契約条件で顧客からPrimaveraベースで進捗報告を要求される)
PrimaveraではPJの個々のタスクがアクテイィビティとして非常に細かく定義され、1つ1つのアクティビティを他のアクティビティと関連づけ(リレーション)、工程上クリティカルなアクティビティを明らかにします。さらに個々のアクティビティには予算も紐付けられます。
アクティビティ毎に適切な進捗実績を反映できていれば、PJ全体の納期が遅れるか、どれだけリソースを投入する必要があるかを把握し、適切にマネージすることが可能になります。
ざくっと言えば、あるアクティビティが遅延すると、それと関係性をもつアクティビティも釣られて遅延し全体が遅延することが明らかになり、また個々のアクティビティの進捗状況とコストの変調が今後のオーバーランを予兆させるため、その為に必要なリソース(ヒトやカネ)が明らかにされ、予め手を打つことが可能になります。