この連載について
すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を給付するベーシックインカム(BI)。2017年は、フィンランドで国民の一部に、約7万円を配るパイロット試験が開始されるほか、米国でも、ベンチャーキャピタルの「Yコンビネーター」が試験を計画するなど、BIがいよいよ進み出す大きな年となる。社会保障だけでなく、国民の「働き方」を大きく変え得るBI。なぜ、今世界でBIが必要とされているのか、日本で導入される可能性はあるのか、ムーブメントの最先端をレポートする。
この連載の記事一覧

【山崎元】日本は「持久戦」でベーシックインカムに向かうべき
NewsPicks編集部 283Picks

【波頭亮】21世紀の「人類の叡智」こそがベーシックインカムだ
NewsPicks編集部 223Picks

【前澤友作】僕が、ベーシックインカムで目指す「当たり前」のこと
NewsPicks編集部 409Picks

【井上智洋】日本は世界初のベーシックインカム導入国になれ
NewsPicks編集部 374Picks

【徹底反論】ベーシックインカムは「不必要な賭け」である
NewsPicks編集部 351Picks

イーロン・マスク、FB創業者…米リーダーがBIに熱狂する理由
NewsPicks編集部 457Picks

【3分解説】なぜ世界は今、ベーシックインカムへ向かうのか
NewsPicks編集部 1025Picks

【北欧要人】ベーシックインカムは「すべき」ではなく「マスト」だ
NewsPicks編集部 654Picks
「全員に金を配る」。壮大な社会実験が始まった
NewsPicks編集部 2861Picks
かつてフィンランドの国際競争力は世界4位で、欧州最強と言われました。
しかし、現在では一転し、『欧州の病人』とさえ言われています。
2012年から経済は毎年縮小する一方、国民の税社会保障の負担はEU内でもトップクラスに重く、一人当たりの負債比率はなんとイタリアを上回るまでになりました。
今や失業率は9.2%で、北欧諸国最悪です。
フィンランドの没落の原因は対ロ貿易の減少やノキアの破綻、製紙産業の衰退など色々あるのですが、その背後には、高齢化による生産性の低下に加え、労組や高齢者の反対によって過大になりすぎた社会保障支出の削減が進まないことにある、と言われています。
そうです。実はマクロ的な状況は日本とそっくりだと言えるのです。
私にはフィンランドにおける一連のBIの議論が、AI云々は実は全く関係なく、この苦境を脱するための魔法の杖を探す試み、もしくは社会保障費の削減が至急命題な中で、反対者の視点をそらし、社会的なガス抜きをする為の『一種の方便』である可能性が高いのではないかと思うのです。
その意味で、もしかしたら日本でのBI議論も同じ文脈で語ることができるかもしれません。
驚きなのは、「社会から、色んな手助けをしてもらってきていたので、今度は、我々が返す番だ。ヘルシンキに残って、フィンランドに税金を払うのが重要なのです」と平然と言っちゃうところ。
スーパーセルは、売上が千億円単位に成長しても社員が200人以下に押さえる考えで、たしかに雇用ではノキアのような貢献はしません。だったらか税金で、という考えもあるのかもしれません。
いずれにせよ、BIを実験できるような国やコミュニティー、機関には、最終的には、そういう富裕層からのロイヤリティがあるところだけなのかもしれない、とも思いました。
ただし、日本は失業率がわずか3%で、社会保障費のGDP比も高齢者年金の負担が重いわりにはフィンランド等よりはるかに軽く、公務員が全就業者に占める比率も世界最低水準です。
日本が率先してBIを導入する合理的な理由はありません。
AIがやってくれると言いますが、将来そういう時代になったとしても、結局資本主義国家では資本家は株主であり年金なので、最終的には国民に還元されます。一気にベーシックインカムにまで話が飛ぶのではなくて、地道に現在の制度における付加価値の増大方法とその配分(たとえば株主還元、たとえば消費税による社会福祉制度の維持)を考えた方が、はるかに生産的な議論になります。
これは単純に「仕事探しをするのか」という短期の問題ではなく、子供の教育など、そもそもの人生戦略全体に影響を与える。
また、働くことの見方を変えるというのは今世界のTopの収入を得ている層でも同じで、スーパーセルのイルッカ・パーナマンのような行動が前提になる。現在でもビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのように財産の大半を寄付に回している人たちがいるが、それを税という形で財源にしないといけない可能性が高い。
そういう意味では資本主義でありながら、社会主義の理想を叶える形になり、産業革命以降続いた社会システムのイデオロギー論争にも決着をつけるかもしれない。
ただ、知っておくべきことは、その社会インフラを支える高い税率と国民の思想。「貴方は自分の収入の半分以上を国に喜んで差し出しますか? その代わり国が色々と面倒見ます」の問いに「喜んで」と答えられる共生の思想がないと、表面的なBIの導入や高福祉政策は大きな歪みを社会に生みだす。
ベーシックインカムの導入により労働生産性、人材の流動性が高まる→社会全体の生産性が向上する→イノベーションが生まれ経済も発展する→時間に余裕のある生活者が積極的に消費する・・・
という流れが理想なのかな。
「人生や暮らしについて絶え間なく心配してしまう可能性があるとしたら? そこに何かを与えることによって、それを活用することができるとしたら? それは、私たちが絶対に試してみなければいけない仮説だ」
同じく北欧で成功しているスウェーデン大使館にBIについて聞いてみました。同じような提案は「シビルインカム」という形であったが、今の政府は懐疑的。そのかわり「一日6時間労働」の実験をしているとのこと。
これも分配をお金で、ではなくワークシェアという形でやろうとしているのかもしれません。ベーシックインカムならぬベーシックワーク?
いずれにしても「実験」ができるのはいいことだ。日本もどんどん実験したほうがいいのですが、日本で実験ができないのは「平等」の原則があるからです。
もちろん日本はフィンランドに注目するべきだと言うのがよくわかります。