この連載について
すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を給付するベーシックインカム(BI)。2017年は、フィンランドで国民の一部に、約7万円を配るパイロット試験が開始されるほか、米国でも、ベンチャーキャピタルの「Yコンビネーター」が試験を計画するなど、BIがいよいよ進み出す大きな年となる。社会保障だけでなく、国民の「働き方」を大きく変え得るBI。なぜ、今世界でBIが必要とされているのか、日本で導入される可能性はあるのか、ムーブメントの最先端をレポートする。
この連載の記事一覧
【山崎元】日本は「持久戦」でベーシックインカムに向かうべき
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【波頭亮】21世紀の「人類の叡智」こそがベーシックインカムだ
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【前澤友作】僕が、ベーシックインカムで目指す「当たり前」のこと
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【現地ルポ】ベーシックインカムはフィンランドを救えるか
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【井上智洋】日本は世界初のベーシックインカム導入国になれ
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【徹底反論】ベーシックインカムは「不必要な賭け」である
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イーロン・マスク、FB創業者…米リーダーがBIに熱狂する理由
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【3分解説】なぜ世界は今、ベーシックインカムへ向かうのか
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【北欧要人】ベーシックインカムは「すべき」ではなく「マスト」だ
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現地取材では、知り合ったスペインの記者が「BIは、スペインだったら、みんな働かなくなって機能しないけど、フィンランドならできそうな気がする」とマジメな顔で語っていました。
そういった地域さも含めて、次世代の社会保障であり、新たな社会の仕組みであるBIが今後どういう展開をたどるのか。米国、欧州のキーマンや提唱者、学者らに取材を重ねた特集です。もしよろしければ御覧ください。
新しい時代には、新しい時代に適応するような社会構造の変化が生まれるでしょう。
純然たる資本主義と市場経済の歪みから社会保障という理念が生まれ、ヨーロッパの各国では(社会主義国かと見間違うほどの)充実した社会保障がなされています。
その行き着く先(もしくは発展プロセスのひとつ)がBIなのでしょう。
社会構造を変えていく意味での先進国の壮大な実験には大いに期待を持っています。
本当は、「みんなと同じがとても快適な」日本社会にとても適合するシステムなのですが…。
また教育領域では、他のセッションですが「試験は必要なのか?」という議論や合科についての話、昨年初めて一部導入を開始したテクノロジーを用いた試験の話などが出ていて、今後も注目していきたいと思っています。
働かなくても最低限の生活が保証される桃源郷がAIによってもたらされるという語は、どうしても信じる気になれません。産業革命以降に蒸気機関、内燃機関、鉄道、電信、コンピュータ等が出てきたこととAIの違いがよく分からないのです。
しかし、少し前のホリエモン氏のインタビューとかで「NPは今だったら北欧に飛んでBIとか特集すればいいのに」みたいなことを言っていた通りの展開になりましたね 笑
マクロでみても過剰な供給はデフレ圧力となり先進国の多くは低インフレ、日本なんてデフレに苦しんでいます。核兵器の台頭と建築技術の向上により戦争や大震災による供給の毀損が起こりにくくなった現代において、平和的な供給毀損の方法がまさにBIなのではないでしょうか。水より金塊が高額なように人は本質的価値よりも希少価値を優先する傾向があり、モノが溢れる社会では感謝や幸福感を忘れやすくモノが売れにくくなります。
BIの導入は人々が本当にやりたいことを仕事にし、自然の中で助け合って暮らし、再びモノやサービスがありがたいと思える豊かな社会を実現し、景気も心も元気にするものと予測します。
この実験が成功するかどうかは、その国の家族の形とも密接に関わっていると思います。そして、エマニュエル・トッドはどんな意見なのか知りたいですね。
エマニュエル・トッドは家族の類型を9分類(常に更新されているので今も引用記事の当時は)にして、イデオロギー、経済を家族の構造とあわせて見るべきだと語っています。
「世界の家族制度を9つに分類し、世界の人々のイデオロギーは地域の家族制度に規定されているという仮説を提示した。
そのうえで、権威主義的で女性の地位が比較的高い家族システムを持つ社会の成長率が高く、反女性主義を取る社会の成長が阻害される、と結論づけた。家族構造によって経済を分析すべきであるという同書は、大きな論争を巻き起こした」
BIが導入されるとしたら、完全に家族の時代から、個人課税、個人給付に移行しないといけないでしょう。
日本は未だ個人課税ではなく配偶者控除をやっているので、導入するならそのあたりもハードルになりそうです。
東日本大震災の被災者へのさまざまな給付金も家族単位で、家長の口座に一家全員分が入る仕組みでした。「おじいさんが周りの人に大盤振る舞いをしてしまって、孫の学費が出してもらえない」などという問題がありました。
BI導入するなら、そういったことがないようにしてほしい。
そしてこの議論がSLUSHの場でなされたことが素晴らしい。
昨年サイボウズの青野さんによばれて、サイボウズDaysに登壇したのですが、語ってほしいと言われたのは「格差」「貧困」の問題。ITのイベントで子どもやシングルマザーの貧困の話をしました。
IT企業のイベントなのに、おもしろいテーマだなあと思っていました。しかし、今後のITのあり方は人間のベーシックな生活の部分としっかりつながってくる。AIの専門家がBIを真剣に語るのは当たり前の構図なんですね。
来年のサイボウズDaysではぜひこのBIのテーマをやってほしいです。
トッドのNPの記事はこちら。もっと読まれてもいいのに残念なので再掲しておきますね。過去記事をあさると掘り出し物にぶつかるので、おすすめです。すでにトランプの台頭も予測されていました。
https://newspicks.com/news/1209071/body/?ref=search
BIを入れるよりも、可能な限り社会保障・消費税を抑え、小さな政府をめざすべきです。北欧は既に国民負担率が高いため、BI導入が議論できるだけです。
BIよりも重要なのは、「ベーシックサービス」のようなものだと思います。技術/シェアエコノミーを総動員して、住居・移動・健康を極力安く提供する。これが日本の道だと考えています。
とはいえ、北米での実験には注目しています。連載、楽しみです。
それが、今回の対象は失業保険や生活保護者の一部が対象です。
つまり今回の実験は、単にBIが失業保険や生活保護制度の代替になるかというものでしかなく、肝心の社会保障制度全体の代替になるかどうかという実験ではないと言えます。
それでもやらないよりやった方がマシという意見もあるでしょうが、フィンランドの失業保険は月700ユーロ。
対してBIは560ユーロですから、実は単なる失業保険の代わりとしても、政府にとっては大きなコスト減になります。
フィンランドは日本と同様高齢化が進み、人口の1割が生活保護対象という国家です。
高福祉国家のフィンランドで、月数百ユーロのはした金で、生活保護や年金が置き換えられるなら、国家にとって万々歳でしょう。
だから私には今回の実験の明るい兆しとは思えないのです。
捻くれた見方かもしれませんが、福祉の充実ぶりで、一部の識者から地上の楽園のように言われた北欧が、遂に自身の高負担高福祉政策を放棄するような実験を始めなければいけなくなった事に、むしろ大きな危惧を覚えます。
現実問題として先進国を覆う少子高齢化は、福祉国家の存立を許さなくなっています。
BIとはAI云々の明るい未来の政策というより、少子高齢化国家のやむなき選択として、福祉国家の放棄とバーターの政策であるという方が現実に近いのではないでしょうか。