【堀江貴文×池田純】プロ野球は球団数を増やすべきか(中編)

2016/8/25
──プロ野球はもっとリーグビジネスをしていくべきだと堀江さんは思いますか。
堀江 ビジネスを拡大していくとしたら、するべきですね。プロ野球にはまだ、やりようがあると思っています。
実際、12年前の球団新規創設のとき、8球団に減らそうとしていたわけじゃないですか。ビジネスがシュリンクしていくから、8球団で行こう、と。「巨人—日テレ」モデル、要は読売新聞の正力松太郎さんがつくったビジネスモデル(テレビ放映権で収益を上げるモデル)が崩壊しつつあったわけですよね。
その議論はわかるけど、そうじゃない方法なら12球団でもやれるよねと僕ら(ライブドア)はいっていました。実際、「いま、12球団はどうですか」といったら、収益が改善しているわけですよ。ベイスターズがこんなに黒字になるなんて、誰も思っていなかったと思います。
僕が普通にプロ野球をビジネスとしてみたら、みんながやるべきことをやっているかといったら、やっていないじゃないですか。横浜でベイスターズエールが販売されていると聞いたら、僕が経営者なら速攻でパクリますよね。
池田 (笑)
堀江 プロ野球は当たり前のことをやっていないだけの話。外国人選手のアジア枠もできていないですよね。そもそも日本のプロ野球が外国人枠を設けること自体に、経済的合理性はあるんですか。
池田 全体最適の目線で考えられているわけではないでしょうね。どちらかというと、日本の野球だから日本人みたいな。そうすれば、日本人選手のプロテクトにもつながりますしね。それはある意味、正しくもあるのですが。
さらに、助っ人外国人の年俸総額をルールでしばっているわけではないので戦略的意図は薄いのですが、一応戦力均衡化にもつながっているといえばつながっている。

外国人枠は撤廃すべきか

堀江 実際にどうですか。
池田 ビジネスでは、考えればいくらでも収益を上げる方法があるじゃないですか。どういうビジネスをやりたいかによってルールも変わるのは、私はありだと思います。個人の意見としては、日本、韓国、台湾の野球アジア3大大国でのビジネスの戦略を描いたうえで、アジア枠があってもいいと思います。
堀江 僕は、枠なんか全部撤廃しちゃえばいいじゃんと思うくらいです。アジア人枠なんか、フル開放でもいい。
日本人選手の出場機会が失われるという話でいえば、Jリーグでもすごく議論になります。でも要は、国内の代表のレベルが下がらなければいい話で。じゃあブンデスリーガに外国人枠があるかといえば、ないですよね。
でもワールドカップで世界一なのはドイツ。なんでかというと、育成にカネをかけているからです。ブンデスリーガとドイツサッカー協会がすごく連携していて、代表で儲けたカネをブンデスでユースに力を入れているチームに傾斜配分しているんです。
日本の野球の場合、高校野球とプロ野球が過去の経緯で仲悪かったりするから、そういうことができづらい環境にあると思います。
最近だんだん国際化してきているといっても、中学から外国人がわんさか入ってくることは、まずありえないし。そこにおカネをどんどんかけてやれば、日本人選手のほうが薄くなることはありえないと思います。
仕組みをただつくるだけなので、僕は外国人枠を撤廃してもやっていけると思いますね。それが極端な意見だとしたら、だいたいマイルドなところに落ち着くと思うので、アジア枠を開放する。それをやったら、もしかしたら韓国人、台湾人選手をけっこうとれるかもしれない。

北陸、四国、東海に余地あり

堀江 もう一つできるのが、野球に興味のない人をいかにスタジアムに呼ぶか。マーケットを広げるとしたら、それとアジアしかないですよね。
池田 うちは実際、野球を大好きではないライトな人たちをスタジアムに呼んでいるから観客動員が増えています。日本ではすでに、子どもの野球人口がバスケに抜かれているんですよね。そう考えると、野球、野球といい続けても、お客さんが増えないんじゃないかな。もっといろんな方法で増やしていかないといけません。
堀江 その意味でいうと、この空間はすごくいい装置なんですよね。日曜日の昼間とか、横浜スタジアムは非常にいい場所ですよね。
そういうところに野球を好きでもないような人たちがバンバン来ているというモデルで考えると、プロ野球ビジネスはまだ何都市かではできると思います。北陸、四国、東海地区にも1球団。余地がなくはないかなと思います。
池田 九州にも北にもセ・リーグの球団がないですよね。僕が軽々しくいうと大問題になるのですが(笑)。
堀江 九州にセ・リーグのチームがあるといいですよね。昔はありましたよね、西日本パイレーツ。1年で消えましたけど。僕は球団歴史オタクなので、だいたい頭の中に入っています。

ビジネスはやり方とアイデア次第

──楽天ができる頃、仙台くらいの規模の都市圏でないとプロ野球球団の経営は難しいという試算があったと聞きました。ただし、やり方はあるということですか。
堀江 いやいや、確かに試合数が多いから大変だという話はあるんだけど、楽天は初年度に黒字になりましたからね。全然ありだと思います。みんながやるべきことをやれば、という話ですけどね。
もちろん初期投資はすごくかかると思いますけど、私はやるべきだと思います。三木谷(浩史)さんとかが文句をいうかもしれないですけどね(笑)。
僕はたとえば16球団でやって、セ・リーグとパ・リーグの東・西地区に分かれてポストシーズンになると、クライマックスシリーズがすごく盛り上がるんじゃないかなと思います。
池田 ビジネスっていうのはやり方とアイデア次第ですからね。試算がうんぬんというのは結局過去の事例で試算をするから、それ以上のものは出てこないんですよ。
堀江 そうそう。しかも独立リーグの四国アイランドリーグとかBCリーグができて、新しい球団が生まれる素地ができてきているから。僕は最近いろんな会社にそういう話をし出したら、「そんなことできるの?」という話をしてきていますよ。
池田 先日韓国に視察に行ったのですが、リーグには財閥系の球団がほとんどの中、2008年に創設されたネクセン・ヒーローズは財閥系ではありません。代表者がおカネを集めてつくった、韓国では初めての球団です。それで黒字になっているらしいです。かなり選手を売るというモデルみたいで。
堀江 育成して売る?
池田 そうみたいです。韓国の中では、かなりパラダイムシフトの球団みたいです。
いままでは財閥のオーナーがドバッとおカネを出して、「赤字でもしょうがないよね」とやっていたけど、どこかのビジネスパーソンがおカネを集めてちゃんとビジネスとして成り立たせているらしいので。どんなことだって、やりようはいくらでもあると思います。
堀江 ホント、やりようはあると思います。企業にそういう話をしたら、「え? できるの?」という話をするところも若干出てきているので、いきなり4球団くらい、ポーンとNPBに申請するかもしれないですね。
そうしたら池田さん、新球団の審査会に出ることになるんじゃないですか(笑)。
(構成:中島大輔、撮影:是枝右恭)