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緊急特集「スポティファイ来襲」

【スクープ】音楽配信の王者「スポティファイ」、ついに日本上陸

2016/8/7

4年越しで本命が上陸

定額制音楽配信の世界最大手「Spotify(スポティファイ)」が、日本でサービスを開始することが、NewsPicks編集部の取材で分かった。

米アップルが「iTunes(アイチューンズ)ストア」で築き上げたダウンロード型の音楽配信モデルに取って代わり、新たな「定額制」というモデルで、世界に旋風を起こす音楽配信の本命がようやく日本に到来する。

複数の音楽業界関係者によると、国内大手レーベルとも契約は既に締結。

8月10日ごろから、まずはエイベックスやユニバーサルミュージックなど、配信準備が出来たレコード会社からスポティファイへの楽曲提供を開始し、まず業界関係者向けにサービスを始める。

その後、国内最大手のソニー・ミュージックなど各社の楽曲が出そろう見込みの9月には、一般ユーザーに招待制での運用を開始し、今秋中にサービスを全面的にスタートさせる方向で調整が進んでいる。

日本では昨年春、アップルやLINEなどが定額制の音楽配信のサービスを開始したが、まだ本格普及には至っておらず、スポティファイの上陸で音楽産業に変革が起きるのかどうかも注目される。

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スポティファイは、2008年にスウェーデンで生まれた定額制の音楽配信サービスで、現在は世界各国で1億人超のユーザーを抱える。そのうち、有料会員の数としても世界最大の3000万人を誇っている。

まずは、欧州から「iTunes」などダウンロード型の配信サービスの牙城を崩し、古今東西の約3000万曲が聞ける月額聴き放題サービスとして、欧州から米国へと席巻していった。

定額制というモデルに加え、個人や団体が好きな曲を選んでまとめる「プレイリスト機能」(20億以上)や、SNS機能や、音楽好きも納得するリコメンド機能が人気の要因となっている。

昨年は、自らも音楽配信に運営していたソニーと提携し、スポティファイによる「プレイステーション・ミュージック」を開始(日本以外)。スターバックスとも提携を強化したほか、米ナイキともランニング時の音楽提供で提携、ボルボなどで自動車にもスポティファイが搭載されるなど、新たな取り組みも進んでいる。

昨年、定額制音楽配信に参入したアップルからは猛追を喰らっているが、まだアップルの2倍(アップルは1500万人)の有料会員数を誇っている。

一方、日本には4年前にオフィスを開設し、これまでサービス開始のうわさが何度も沸き起こっては消えていた。

これまでは日本人アーティストの曲を海外向けに配信するなどしていたが、ここに来て、ようやく本格上陸することになった。

戦国時代を勝ち続けるか

ただ、前述のように、日本では昨年、スポティファイ上陸を前にして、定額制音楽配信サービスが次々と開始している。

昨年5月に、米アップルによる「アップルミュージック」、6月にはLINEとソニー・ミュージックによる「LINEミュージック」、サイバーエージェントとエイベックスによる「AWA」が相次いでサービスを開始。

さらに、昨秋には、米アマゾンによる「プライムミュージック」、今年に入ってからは楽天も、定額制音楽配信に参入している。

現状、レコード会社関係者によると、国内の会員数では、アップルミュージックが独走状態になっている。

2番手につけるLINEミュージック、AWAは、無料お試し期間が終わるタイミングで離脱するユーザーが相次ぎ、一般ユーザーへの広がりが思うように進まなかったことから、無料から有料会員への誘導のノウハウがあるスポティファイに白羽の矢が立ったという。

ただ、LINEミュージックも、今年に入ってLINEのプロフィール画面にお気に入りの楽曲を表示する「BGM」の機能が人気を博し、有料会員数で大きく盛り返しており、スポティファイの参入で競争が激化しそうだ。

無料と有料問題

ただ、音楽業界関係者では、定額配信の「本当のライバルはユーチューブ」との声が強くなっている。

特に日本の若年層では、音楽視聴について、アップルミュージックやLINEミュージックの有料サービスではなく、ユーチューブを経由した無料アプリで音楽を聴く層が極めて多いためだ。

今年に入ってから、国際レコード産業連盟(IFPI)がユーチューブの著作権管理システムについて、「違法なコンテンツ視聴を防げていない」と声明を出すなど、音楽家への著作権料をめぐる問題も噴出している。

そんな中で、一部無料のスポティファイがどれだけ、若年層に音楽コンテンツへの課金を促せるかも注目されている。

日本語用の広告も用意されているようだ。

日本語用の広告も用意されているようだ。

そこで、NewsPicks編集部では、スポティファイ上陸に合わせ、計3回の緊急特集を開始する。

まず第1回では、音楽配信の専門家で、コンサルタントの榎本幹朗氏に、スポティファイが世界で最大のサービスへと成長した理由や、日本で4年間の足踏みがあった理由を、音楽配信の歴史とともに解説してもらう。

第2回、第3回では、ユーチューブを含めた、音楽と「無料」を巡る問題も含め、スポティファイなど定額制音楽配信が果たす役目についても、触れる予定だ。もう一つは、評価額が80億ドル(約8000億円)とされ、来年のIPO(新規株式公開)がうわさされるスポティファイのビジネス上の課題と挑戦について、解説していく(順番入れ替えの可能性あり)。

*目次
【スクープ】音楽配信の王者「スポティファイ」、ついに日本上陸
赤字の8000億円企業スポティファイは、IPOで勝ち残れるのか
 
榎本幹朗氏 寄稿(3回)
・前編:【3分読解】スポティファイはなぜ世界一を獲れたのか
・中編:スポティファイ上陸、足止め4年「真の理由」
・後編:iTunes、スポティファイ……、歴史が証明する「成功の秘訣」