【番外編・上】ホリエモン、LINEのライブドア軍団を語る

2016/6/26
LINEのメッセージアプリの成長を支えているのが、2010年5月に買収されたライブドアの遺伝子を受け継ぐ、約300人の元社員たちだ。 その創業者である堀江貴文氏は、今、何を想うのか。

僕と関わると上場できない

──堀江さんが率いた時代のライブドアと、事件後のライブドアは、企業として大きく異なるという声もあります。堀江さんはどう思っていますか。
そういうふうにしないと、LINEは東京証券取引所の上場審査に落ちるんですよ、たぶん(笑)。
そのあたりについては、すごくLINEは気にしていると思いますよ。出澤(剛・LINE社長CEO)君だって、ライブドア事件では調書を取られていますしね。
ロジックというより、気持ち的な問題じゃないですか。僕との関係性があると上場させないぞ、みたいなことを証券会社とかはいまだに言いますよ。
みんながみんなで縛っているというのが現実なんじゃないですかね。
僕が出資しようとしても、「あいつはもう入れるな」と。まるで村の掟みたいなもんですよ。かき回されるのがいやなんですね。
──上場したら、LINEの株は買いますか?
買わないですよ(笑)。だって、僕、上場株なんか買わないですから。上場株は基本的にオーバーバリューで割高ですからね。
別に上場株って、確実に値上がりするかどうかもわからないし、市況にも引っ張られる。あんまり良い投資じゃないんですよね。
要は、あまり株を買う機会がない人たちのマーケットだと、僕は思っているので。
──ところでLINEには、今でも堀江さんがつくったライブドアの“遺伝子”が残っていますね。
旧NHNジャパンからLINEに会社が変わって、ライブドア時代の人材が戻っていますよね。いわゆる「出戻り」が多い。それが、ライブドアの人材の厚みってやつです。
だから1回のあの事件で、人がバッといなくなったのだけれど、優秀な人もたくさんいたので、その人たちが戻っています。
田端(信太郎・法人ビジネス担当上級執行役員)君とか、池邉(智洋・サービス開発担当上級執行役員)君、その部下の吉川君とか。
──すると、事件前のライブドアでも優秀だった方がLINEにいると。
よく残ったり、戻ったりしたと思いますね。いい人間が残っています。
LINEへの思い入れを語る堀江貴文氏。

大活躍する「元ペーペー社員」

──たとえば、いい人材といえば?
やっぱり池邉君ですよね。ライブドアブログをつくったのはすべて彼ですものね。
もともとは、ユミルリンクという小さい会社にいて、そこがサイバーエージェントに買収されるんですけど、彼だけライブドアに来たんですよ。
ユミルリンクは、彼がいなくなったらあまり意味がないんじゃないかと僕は思うぐらい、彼はすごくできる人です。
僕は、技術者の採用戦略を重視していました。ダンコガイ(小飼弾・元ライブドアCTO)という人がいて、彼を採用してから、採用戦略がうまく働いていたんですよ。
他にも、LINEのコーポレートビジネス部門にいる谷口(正人)君とか(も良い人材でした)。彼はずっとライブドアにいたんじゃないかな。
──古賀美奈子・LINE事業部長も広告ビジネスを引っ張っていますね。
古賀ちゃんね。古賀ちゃんは、(事件前のライブドアでは)、本当にペーペーの営業でしたよね。(現在の活躍を聞いて)すげえ、こんなことになっているんだ、と思いましたね。
あのころは営業会議では一番の下っ端でしたしね。

国内企業は怖くて買収できず

外資系だからっていうのもあるんじゃないですか。
国内系は(ライブドア事件のイメージをまだ引きずっているので)怖くて買えないでしょう。国内系で本気で買いに来ていたのは、DMMぐらいじゃないですか。
DMMは、同人コンテンツ販売の「DLサイト」が欲しかったみたいですけどね。エロがあると上場ができないから、今は(レンタルビデオの)ゲオにいきましたけれども。
出会い系サービスも、ミクシィの朝倉(祐介前社長)君が買ってくれました。
──そういうパターンもあるんですね。
僕は基本的に、儲かっているところにはあまり文句も言わないし、手も出さないというマネジメントなんですよ。
だから検察に追及されたとき、「お前、こんなにマイクロマネジメントをしているのに、なんで資金の流れがわからないんだ、ウソをついてるだろ」とすごく言われたのですけど。
それは儲かっていない部門は、超マイクロマネジメントをしているだけで、儲かっている部門は、部門長にお任せなんです。
だから出澤君のところの事業についても、軌道に乗ってからは、全然手を出していないんですよね。
最初の立ち上げだった、1998年のiモードの第1号コンテンツは、僕がずっとケアしていましたけれど。
LINEが本社を構える東京・渋谷エリアの未来図(模型)。
──出澤社長に初めて会った際の印象を覚えていますか?
朝日生命とはいいところから来た、みたいな(笑)。全然いい人だなと思いましたけれど。淡々と仕事をするバランスタイプというか。
そんなに大胆な投資もせず、大きく売り上げが伸びることはなかったけど、利益はずっとコンスタントに出していたタイプですね。
あの頃、彼が出向で来ていたのですが、朝日生命との合弁会社が解消したことで、そのままライブドアの社員になっちゃったんです。
ライブドアの課題は当時、営業だったのですが、データセンターのコストを削減して売り上げを上げるという仕事を、彼らはほとんどしていましたね。
──なぜ、堀江さんの後、出澤さんがライブドアの社長になったのでしょう。
やっぱり、ライブドア事件で傷が浅い人っていう流れなんですよね、逮捕はされないだろうな、という。
──現在ではLINEの「トロイカ体制」の一角を担っていますね。
そういう流れでは、なんで出澤君を社長に据えたんですかね。
僕の視点でいうと、やっぱり基盤があるし、マーケティングがすごくうまいですよね。儲けるのがうまい。
やるべきところをちゃんとやっている感じはしますけれどね。
中編へつづく。
爆速成長アプリを生んだ日韓ハイブリッド経営
LINEの秘密
  1. LINE上場前夜。韓国人トップが語った言葉
  2. LINE上場、足止め2年間の全舞台裏
  3. 上場でLINEは韓国本社を超えるのか?
  4. 【インフォグラフィック】“LINEの父”シン・ジュンホの逆転劇
  5. 神出鬼没 謎に包まれたネイバー創業者の悲願
  6. グローバル化の鍵握る、韓国の黒子たち
  7. 韓国を牛耳る財閥とLINE。その実力を徹底比較
  8. 韓国のアプリ「監視社会」は他人事か
  9. LINEキャラを発明した韓流作家の素顔
  10. 【チョン・ヤンヒョン】LINEの父に伝えた、日本市場「3つの秘訣」
  11. 【パート2】LINEに流れる「ライブドア」の遺伝子
  12. 株式会社「ライブドア」が消えた日
  13. ライブドアが教えたLINEの“稼ぎ方”
  14. ゲーム事業との“離婚”。そしてトロイカ体制へ
  15. 【舛田淳】シンと私は分身のような存在だ
  16. 【舛田淳】フェイスブックに本気で対抗している
  17. 【パート3】LINEがフェイスブックに勝つ方法
  18. 決済で最先端ゆくウィーチャット。7億人の衝撃
  19. 絶対王者「ワッツアップ」を襲う、ロシアの異才
  20. スポティファイ来襲直前。LINEミュージックの誤算
  21. ついにLINE上場を認める、東証の“本音”
  22. 【編集後記】LINEに眠るドラマ
  23. 【番外編・上】ホリエモン、LINEのライブドア軍団を語る
  24. 【番外編・中】LINEが勝つには「買収」しかない
  25. 【番外編・下】ライブドアがあったら、iPhoneをパクっていた