三菱UFJ銀、フィリピン大手銀に1000億円出資
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メガバンクの海外銀行への出資が活発になってきた。銀行の海外収益比率はかなり高くなっている。三菱UFJ銀行の連結ベースの業務粗利益に占める海外比率は2015年3月で既に45%もある。三井住友(33%)、みずほ(35%)の両フィナンシャルグループを大きく引き離している。
バブル時代にグローバル化を進めた日本の銀行は、バブル後に撤退を余儀なくされたが、リーマンショック後の欧米銀行の退潮を機に攻勢に出ている。もはや全ての業種で、日本国内だけで良いと言う発想では成り立たない。
今後とも失敗を恐れずに海外へと進むべきだろう。Security Bankの足元の時価総額は約USD 1.7bn(約2000億円)。新聞報道の通りだとすると、20%買取時の時価総額前提は5,000億円。買取のバリュエーションはPER 17x程度、PBR 2.3x程度、足元株価に対するプレミアムは150%程度。バリュエーションは一見高く見えますが、①東南アジアでのM&Aでは例えマイノリティであっても高いプレミアムを支払うのがプラクティスですし、②対象会社の過去5ヶ年の平均ROEは22%ですので、PBRで見るとまずまずの水準かと思います。
下は以前書いた関連ピックからのコピペ:
日本企業を含めた外資企業による新興国(の金融機関)を対象としたM&Aでは、①のれんが多額に生じやすく、かつ②減損が発生しやすい構造にあるものと思います。
①の理由について、高い成長が期待されたり高いインフレ下にある新興国では、企業の資本蓄積が小さく途上であり、PBRにして3-5x程度のバリュエーションとなることがままあります。この例ですと、純資産(持分相当)の2-4x程度ののれんが発生します。
②の理由について、そもそも当該国のマクロ経済が世界経済の影響を受けやすい性質にあったりマクロ指標やインフレ率が歴史的にぶれやすかったりすると、当該国で活動を行う企業の収益も相当ぶれます。このとき、M&A時点で立てた計画が未達となることで、のれんが減損となるリスクがあります。
また、新興国では(特に金融機関など国民経済に直結する産業において)外資資本規制が存在することがあり、この外資資本規制の要請で外資企業は上場企業のマイノリティ持分しか取得・保有できないことがあります。このとき先に述べた計画未達による減損リスクの他に、M&A後であっても対象企業は引き続き上場企業であるため、株価下落により減損の兆候が発生することがありえます。外資企業が新興国ローカル企業を買う際に、マイノリティ出資でありつつも売り手から株価に対して高いプレミアムを求められたとすると、M&A後に株価が少し下落しただけで減損を検討しなければならない水準に突入してしまいますお金いっぱい持っててうらやましい。。
(追記)
また脊髄反射的に書いちゃいました。本業の分野なのでもう少し書きます。
途上国の金融だとPBRが5倍前後というのはよくある話で、特に勢いがあると6倍以上みたいなのもあります。インドの上場しているマイクロファイナンス機関(銀行)のPBRを一昨日みたら6.45でした。
日本のようにPBRは1以下当たり前、みたいな世界ではなかなか理解されないですが、バリュエーションは成長性とリスク(特にベータのリスク)によって決まるので、実は妥当ともいえる。結局のところ、バリュエーションというのは「r - g」の逆数で、rはベータ、すなわち市場リスクへのエクスポージャーによって決まる。
さて、フィリピンの金融事情ですが、東南アジアの中では金融規制が比較的しっかりしている国として認識されており、Economist Intelligent Unitが毎年出している途上国の金融ビジネスしやすさランキングでは常に上位5位にいます。さらに言うと、島が多く出稼ぎ労働者も多いので、送金ビジネスも日本よりも発展していたりします。心配事は、金融ビジネス成長の土台であるマクロ経済成長。いわゆる「中進国の罠」にはまってから結構な年月が経ちます。いくら金融セクターだけ洗練化されても、経済が伸びないと長期的にはきつい。