厚労省、企業年金の成績開示へ 他社と比較、利益向上狙う
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【経済】これはかなり重要な決定だと思う。確定拠出型(DC)であれば、運用委託先の金融機関から年1回運用状況のレポートが届いたり、ウェブであればリアルタイムに運用状況を確認したりすることができるが、確定給付型(DB)は企業年金担当者(大抵の場合は人事部門か財務部門の担当者)でないと詳細な情報を知ることができず、「ブラックボックス」化されている感がある。
将来企業年金でどれだけ給付されるかの見通しが立てば、数年前に話題になった「老後2,000万円問題」が「老後2,000万円-(退職金+企業年金)問題」になると思うので、老後の不安を少し低下させることが可能となるはず。
一方で、政府・厚生労働省がこのような取り組みに力を入れている「狙い」も正確に読み取る必要がある。本来企業の福利厚生の一環にすぎない企業年金について政府・厚労省がここまで口を出すのは、将来公的年金だけでは老後の生活を保障できる見込みがないため、新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)同様、不足分について個人できちんと金融資産を形成してくださいということだろう。
最近は公言こそされないけれども、善し悪しの価値判断は別として、この20年ほどで確実に「自己責任」や「自助努力」というものが求められる社会になっているわけで、この流れは今後も強まってゆくことになるだろう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」を見ると、いわゆる「就職氷河期世代」にあたる40~50代の単身者の4割程度が金融資産非保有の状況にあることがわかる。こうした人たちが5~25年後に高齢者になった時に、そもそも納付していた年金保険料が十分でないために十分な公的年金給付を受けられなかったり、金融資産形成がなされていなかったりするために生活が立ち行かなくという事態が必ず発生するはずだ。
家計の金融行動に関する世論調査
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/
現在40~50代の人たちは、自分の年金保険料納付状況や勤め先の企業年金がどのようになっているのかを正確に把握したうえで、きちんと金融資産を形成しておいた方が良い。良くも悪くも、国は確実に「自己責任型社会」のための外堀を埋めてきている。
注目のコメント
これはやるべきですよね。
確定給付企業年金は給付額が決まっているので、運用が上手く行っていなければ債務超過状態になってしまう。そうなると加入している企業がその不足分を補填しなければならず、結構なリスクだと思います。
リーマンショック時にはその状態にある年金がたくさんあり、クライアント先で加入している年金基金に問い合わせたら脱退時の負担が何千万円にもなっていました。
その基金も恐らく今は回復していると思いますが、加入する企業としては運用実績はとても大切ですので開示すべき情報ですね。
一方で確定拠出年金だと、自己責任での運用になるので、企業側のリスクはなくなる理解です。
最近は10名以下の企業でも企業型の確定拠出年金に加入している会社も増えてきていて、会社としても社会保険の負担が減るなどのメリットがあるので、導入する企業は増えてきている印象です。代表的なアセットオーナーである企業年金基金の運用に直接の効果がある施策ではありませんが、運用成績の開示を通じて投資運用戦略やプロセス等へのガバナンス強化と間接的な効果としての投資運用能力の向上や新興運用会社への運用委託の活性化等も期待されると考えます。
昨年末に策定された資産運用立国実現プランがスピード感をもって進められており、前向きな動きを心強く感じます。