出光興産・経営企画部がシナリオ専門チームを置く理由
コメント
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取材していただきました。
編集部のみなさま、ありがとうございました!
(まさか自分がNPに登場する日が来るとは、夢にも思いませんでしたw)
「① どれも同じ確率で起こりそうだと思えるシナリオを作る」という点につき、少し補足してみます。
(シェル流)シナリオプランニングにおけるシナリオは、未来の可能性を描くものであり、将来予測ではありません。
つまり、将来を当てようとしてシナリオを作っているわけではなく、“将来はどうなる可能性があるかを探索した結果”、がシナリオです。
シナリオプランニングでは、「将来は予測できない」という考え方が根底にあります。
予測ができない以上、将来のことを描いたシナリオに、確率を設定するということは、そもそもできません。
ですので、「どれも同じ確率で“起こりそうだと思える”」という、少しややこしい表現を使っています。
シナリオABCがあったとして、「Aの未来もBの未来もCの未来も、どれもたしかにありそうだ」、ということを狙っていきます。
シナリオAだけ確率が高そうとかCだけ低そう、ということではありませんし、AもBもCも確率10%でそろえています、ということでもありません。
これだけでもなかなか難しいのですが、シナリオ作成でさらに大事なのは、「考えたこともなかった未来像」を含める、という点です。
「考えたことがある未来像」だけを並べても、聞き手の視野を広げる、という目的につながらないからです。
以上、ご参考まで。
注目のコメント
出光は昭和シェルと統合したが、Shellはずっとシナリオプランニングで有名。
シナリオというと「予測」と想起しやすいが、最大の目的が「聞き手の視野を広げる」である点が興味深いし、まさにと思う点。
未来は予測出来たら苦労しない。色々な未来を考える過程で、それぞれのシナリオになるとしたら、どういう先行的な事象が発生したりどう対応するかを考える。その過程によって鍛えられ、経営だけでなく事業部戦略等でもやることで、組織の適応力が上がる。
Shellが源流にあることも含めて、下記の2記事も併せて興味深い。
一つ目の記事では、シナリオとして石油危機を想定できていたが、上手くいかなかったことについて、『シェルのシナリオ・プランナーが描いていた「適切な情報を届ければ、マネージャーが適切な判断を下す」という考えは失敗に終わりました。この経験からシナリオ作成チームが気付いたのは、自分たちの仕事は、意思決定者に情報を届けることではなく、世界観を考え直してもらうことが任務であるいうことでした。』という言及があり、まさに本記事とつながる点。
二つ目は、Shellの本拠の一つであるオランダの裁判所が、脱炭素に関係する経営目標を引き上げろという判決を下したことについての記事。同社も1.5度に抑える前提での目標だが、オランダは海面上昇リスクが高い。
一方で、昨年のCOP時点では1.5度が難しいという現実も、より濃厚になっている。目標は重要だが、目標だけに盲目的になりその通りにならなければ、ほかの経営リスクも顕在化する。
意思もコミュニケーションも経営判断やその執行では重要。逆に、そこは経営マターであり、シナリオ作成者には上記の視野を広げるという目的と、それを実現する独立性が極めて重要。逆に過度な目標に2021年になっていなかったのは、現実的だったとも考えられる。
シナリオ手法(シナリオ・プランニング)ケーススタディ(Change Agent)
https://www.change-agent.jp/learningorganization/scenario/scenariocase.html
シェルは間違えたのか 脱炭素シナリオの読み方(日経新聞、2021/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD063B80W1A600C2000000/「あえて未来を疑ってみる」「同じ確率で起こりそうなシナリオを作る」など、シナリオプランニングの“具体的な実践”を知りたかった自分にとって、まさに目から鱗の話をしていただきました。
中期経営計画に盛り込まれたシナリオ(『むら雲』『虹』『碧天』など)のネーミングは、 OJTでシナリオプランニングをインストールしてくれた、上司の方が考えられたとのこと。
「シナリオプランニング」という1つの手法が、先達の上司から部下へ、昭和シェルから出光興産へと受け継がれて、経営・事業戦略に活用されるまでのプロセスを伺い、推進者の強い想い・こだわりを感じました。
また、今回ご紹介しきれませんでしたが、他社の経営企画部でシナリオプランニングを有効活用・チーム化するうえでは、①シナリオプランニングという手法を活用するかどうか、②社内に専門チームを持つかどうかの論点があり、①の成果を以って意義を伝える、経営者に腹落ちしてもらうことが重要であると教えていただきました。
記事と併せてご参考になさってください。