「街に“ゾンビ”のような人が」…アメリカで年間7万人超が死亡 乱用相次ぐ「フェンタニル」巡り米中駆け引き
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最初に日本人に多い誤解を解いておくと、記事で紹介されるような乱用はもちろん大きな問題ですが、フェンタニルは集中治療領域やがんの痛みに広く使用される薬でもあります。適切な管理のもとで使用していれば、比較的安全にうまく痛みをコントロールしてくれる素晴らしい薬剤です。フェンタニル=危険、フェンタニル=乱用ではありません。
またフェンタニルは「モルヒネの100倍の効果」というような記述も見られますが、同じ投与量でその効果を比較するのは誤解のもとで、基本的に適切な換算をしていれば、モルヒネであれフェンタニルであれ同等の効果を持つ薬剤として代替が可能です。フェンタニル=最強の薬剤でもありません。
ただし、フェンタニルは他の薬剤に比べて脂に溶ける性質から身体に残りやすいといった特徴や、呼吸を抑制する副作用が比較的出やすい特徴があり、そうしたリスクは使用する医師も意識をしながら薬剤を投与します。こうしたリスクは、乱用時の死亡を招く一因にもなってしまっているでしょう。
一方で、薬の代謝が腎臓の機能にあまり影響を受けないことから、腎臓の機能に問題がある患者さんには、むしろモルヒネなどよりも安全に使用が可能な薬剤となります。物事をあまり一面的に捉えず、それぞれの薬に強み、弱みがあることも理解をしておく必要があります。
こうしたニュースは、いざ医療機関で薬を目にした際の誤解を招きやすいため、あえて医学的な側面からのみコメントを書かせていただきました。私自身、直接見たわけではありませんが、街中にゾンビの様に薬物中毒者が普通にいる街があるという話は聞きます。アメリカは経済的に最も優れた国ですが、貧富の差は大きく、まさに資本主義国と言えるでしょう。救急車を呼ぶにも有料ですし、お金がなければ医療も享受できません。
日本は一方で、規制を厳しく取り締まり、お金がない人に向けた支援も広く行なっており、社会主義の側面が強い国です。資本が少ない人であっても何とか普通の暮らしができる様に税金を高く設定し、生活の均一化をはかっています。
どちらが良いという話ではありませんが、日本の住みやすいという話はよく聞きます。米国ではオピオイドによる死亡者数が過去30年間で約10倍に増えており、その大きな要因となっているのがフェンタニルです。以前はメキシコ国境に近い州で使用が広がっていましたが、現在はニューヨークなど主要都市で大きな問題になっています。フェンタニルは少量でも致死量になることから、他の薬物やお菓子などに混入させられたものを接種した人が亡くなるというケースもしばしばみられ、大きな社会問題になっています。
フェンタニル自体は正しく使えばがん患者の疼痛を管理したりするための有用な薬剤です。医師が処方として使用した時のフェンタニルと、違法薬物として使用した時のフェンタニルは全く意味合いが違いますので、誤解のないようにしていただければと思います。