大統領選、右派ミレイ氏が勝利 アルゼンチン、通貨ドル化主張
コメント
注目のコメント
圧勝でした。今、ミレイのYouTubeチャンネルを通じて現地テレビの映像を見ています。JETRO-IDEアジ研のアルゼンチン政治の専門家である菊池研究員が、8月の予備選挙でミレイの後塵を拝したマッサ候補が10月の一次選挙で巻き返した(得票率:マッサ37%、ミレイ30%)背景について以下指摘しています。
・マッサが予備選挙を通過しなかった候補の受け皿になっていた
・ミレイの言動や政策(ローマ法王への批判、銃器売買規制の緩和、補助金カットなど)に不安を覚えた
・8月の予備選でミレイが得票を伸ばしたのが地方選だった。しかし、その後、現与党が勝利したブエノスアイレス州等でマッサ支持のキャンペーンが行われた
その上で1次投票後の政党間協力の変化について以下加えています。
・ミレイが政権奪取の暁には一次選挙で敗れた野党候補のブルリッチ氏を閣僚に迎えるなどの約束をして、ブルリッチ、そして元大統領のマクリを取り込んだ
(オリジナルは次のURLで読めます)
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Eyes/2023/ISQ202320_031.html
8月時点の状況をもとに私もNPの中南米トピックスで本件4本書きました。(https://newspicks.com/news/8793607/body?ref=topic-jorge_takeshi_lac)
ドル化や中銀廃止などは議会との関係で難しいと書きましたが、その後、現野党の最大勢力を取り込んだことで、最終的にどのような政策アウトプットになるのかが注目されます。現野党所属のマクリ元大統領の政策は産業、金融界にはウケが良かったわけですが、その前の負の遺産(外貨準備の枯渇、財政支出等)が大きすぎたこともあり、アルゼンチン国民は改革の成果を待てないまま次の選挙で再び左派政権を支持した経緯があります。
対外政策として現政権は中国に近かったわけですが、ミレイは親米です。一帯一路脱退するのか?はたまたメルコスールも本当に脱退するのか?など他国が気にしている公約を本当に実行に移せるのか?これについても入閣予定の現野党のキーパーソンが新政権でどの程度の発言力を持てるのかに注目したいと思います。南米では、パナマ(運河建設以来の米国経済圏)、エルサルバドル(内戦を逃れた米国への出稼ぎ者からのドル送金)エクアドル(経済破綻により欧米に行った出稼ぎ者のドル送金と少量ながらのオイルマネー)などの正式のドル経済圏国があります。また、非公式ながら経済政治破綻により実質的にはドル経済圏に追い込まれているベネズエラがあります。この4カ国は、いずれも経済規模が小さいのでなんとかドル化を維持できているのでしょう。
アルゼンチンは経済規模や人口も大きく、先行4カ国のようにいくかはわかりません。
ドル化にばかり注目が集まっているようですが、ペロン大統領以来のポピュリズムが今後どのように変わっていくのか興味あるところです。アルゼンチン経済の問題は、このポピュリズムにより国民が額に汗して働くことを忘れたからということも出来ます。
その意味では、ポピュリズムのマッサが負けて、その脱却(?)を訴えたミレイが勝利したことは良かったのかもしれません。まだまだ何もわかりませんが。アルゼンチンがアメリカ合衆国の51番目の州になることを選択したアルゼンチン国民に祝意を表したいです。
これまで新興国のドル化の多くは、米国のインフレ率が低い、あるいは低下する局面で行われることが多かったように記憶しています。今回ミレイ新大統領が提唱するドル化や中銀廃止は、米国のインフレ率がまだまだ高い局面でのドル化ですので、世界経済の経験が少ない新たな取り組み、実験的な賭けということになります。注目しましょう。