肥満薬「ウゴービ」、心血管疾患にも効果 5年越しの大規模治験
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まだピアレビューを受けていないという事は、専門家の目を通していないという事ですが、結果だけを見ると素晴らしい報告だと思います。
副反応がどの程度出たかは大きなポイントになりますが、肥満患者の心血管イベントの予防という領域では、主力の薬になる可能性が高いと思います。
こういった研究結果や記事を見て、肥満でもないのに使いたいと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、正しく使わなければ副反応のリスクばかりで、良い結果は得られませんので注意しましょう。ウゴービ(一般名:セマグルチド)はGLP-1受容体作動薬に分類される薬で、肥満の治療薬として使用されている薬です。論文はまだ発表されていないため詳細は不明ですが、20%の心血管イベントの抑制効果がみられたのであれば、期待ができる結果と言えそうです。
当初の適応とは異なる面の効果が臨床試験で示されるということは他の薬でもありました。例えば、SGLT-2阻害薬は、当初は糖尿病の治療薬として開発されましたが、その後糖尿病の患者以外でも心臓や腎臓の合併症を予防する効果があることがわかり、様々なガイドラインで使用が推奨されるようになりました。
臨床試験の詳細な結果を待つ必要はありますが、この結果によりウゴービの扱いは「肥満の患者に使える薬」から「45歳以上で、心臓病の既往があり、(糖尿病の有無は関係なく)過体重または肥満がある患者が、心臓病を起こさないために使用する薬」になり、適応となる患者層は大幅に広がる可能性があります。米ノボノルディスク社の「ウゴービ」の臨床試験の対象ですが、すでに同じ米ノボノルディスク社が糖尿病治療薬として「オゼンピック」という商品名で発売している医薬品にも、「ウゴービ」と同じ「(一般名)セマグルチド」という薬理活性を発揮する成分が含まれています。今回、同じセマグルチドを含有する医薬品にあえて「ウゴービ」という異なる商品名をつけて抗肥満薬として発売しています。
今回の臨床試験の対象は、「糖尿病の既往歴のない方」ですので、糖尿病治療薬「オゼンピック」は使えない方々で、かつ「心臓病の既往歴があるものの治療により回復した方々」、つまり現在は心臓病ではない方々を対象にしています。現在は糖尿病にも心臓病に罹患していない方々が、「ウゴービ」を注射(皮下注射)し続けると「心血管疾患の予防」にもなるという効果をアピールできます。ただし「ウゴービ」は、心血管障害の予防目的では承認が下りていないため、以下の条件を満たす必要があります。
「ウゴービ」が効能・効果で取得できている内容は、肥満症ながらも、高血圧、脂質異常症又は 2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下のいずれかに該当する場合に限るとなっています。
(1) BMI が27以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
(2) BMI が35以上
肥満度を示す指標BMI(Body Mass Index)は、「体重(kg)÷ (身長(m))^2」で求められます。記事中のBMI27は、身長170cmの方で約78kg、150cmの方で約61kgであり、BMI35とは、身長170cmの方で約101kg、150cmの方で約79kgになりますので、本来、2つ以上の肥満に合併する健康被害が現に存在していなければ、使用が可能になる範囲は広くはありません。
「ウゴービ」を使って想定される臨床効果として、心疾患血管の合併症予防が期待できるとの印象が備わると、医師にこの医薬品を処方してもらう理由を提供することになります。実質的に製薬企業が企画した臨床試験であり、実施には膨大な費用がかかりますが、医学の発展に貢献し、製薬企業にとって良いデータが得られると市場拡大につながるという性格を持ちます。