iPS創薬、数年後に世界初実用化へ 慶大がALS治療薬
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素晴らしい発想の研究です。
人間の神経細胞で実験をしようと思うと、患者から神経を切除しなければいけないところを、適当な細胞をiPS細胞にして、神経細胞に分化させるという手法で再現しています。
これで人間のALSの神経細胞モデルが手軽に作れて、多種多様な薬剤に対して細胞レベルでの実験、簡易に行う事ができるというわけです。
効果があった薬にまとを絞って、実際に臨床試験を行い、効果を判定すれば、無駄なく創薬に繋げられますね。
今回とは少し違いますが、細胞を使って薬を探すという方法は、コロナウイルスの治療薬を探す時にも使われました。コロナウイルスを感染させた肺の細胞に、既存のどの薬を使えば効果が得られるかという実験でした。実は、これによってイベルメクチンが効果あるという話になったり、マラリアの薬が効くという話が生まれました。
素晴らしい手法も、使い方を間違えると無駄が増えるため、適切に活用し、創薬に活かしていただきたいです。iPSというと細胞治療を思い浮かべますが、薬理試験に使う方が確実性の高い戦略です。細胞治療の場合、その細胞が免疫に排除される可能性がありますし、組織の定着しても細胞が実際に機能するかという問題があり、もう少し長期には、がん化の可能性もあります。
iPSを使った薬理試験は希少疾患を中心としてその期待は大きく、もっと、世の中で注目されてほしいと思っています。
細胞を用いて薬の効き目があるかどうか調べることは、製薬会社では当たり前のプロセスとして行われます。他に、標的となるタンパク質がわかっている場合には、その分子との結合を直接見る試験を行いますし、細胞での効き目がわかってきたらマウスやラットといったげっ歯類を使った試験を行います。それぞれ扱うものが大きくなるほど一回当たりのコストが高くなることや、薬の候補が影響を及ぼす範囲が大きくなるので、因果関係がより正確に見た方がいいかどうかということを考慮して、各種の試験を併用して進めます。もちろん、コストが大きい試験をむやみにたくさん行うことはできません。
その中でiPS細胞を使った試験だけ変わって意味があるかというとこれはあります。ユニークな試験系を持つことはユニークな化合物やユニークな抗体を取ってくる可能性を高め、ライバルとの差をつける競争優位の源泉だからです。(本当に効く化合物、抗体などがみつかれば、それは患者さんの利益として返ってきます)
加えて、細胞治療は現状、一般にかなりのコスト高(製造コストが高い)です。化学プラントで作る低分子化合物はもっとも生産コストが安く、細胞使って作る抗体医薬品などの生物医薬品は、細胞治療より安く、低分子医薬品よりも高いのです。レカネマブなどの抗体医薬品の価格が問題になりますが、その背景には生産コストの高さがあります。