「モンベル」はなぜ過疎地でも成功するのか? アウトドアブームとは距離を置く出店戦略
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マーケティング論の観点からしても、大変興味深い内容でした。マーケティングセオリーに乗らないことによる成功とありますが、あえてマーケティング論に当てはめてみると、モンベルは本来の意味での「ニーズ型」企業だと言えます。
マーケティング戦略は大きく、「ニーズ型」「ウォンツ型」「シーズ型」に分けることができます。
”ニーズ”という言葉はよくマーケティング界隈でも聞かれますが、多くのケースで「何が欲しいか」という物や手段目線で用いられることが多いように感じます。これは厳密には、マーケティング論上では「ウォンツ」(=手段に対する取得欲求)と呼ばれます。一方、本来的な意味での「ニーズ」(=課題に対する解決欲求)は、具体的な物や手段の欲求に至る前にある「何に困っているか」の目的目線を指します。
私たち消費者の周りはすでに多くのもので溢れていて、具体的に欲しい物「ウォンツ」が頭に浮かぶことはほとんどありません。現代のマーケティングにおいて重要なことは、「何が欲しいか」を尋ねるよりも、「何に困っているか」からその課題を解決する物を具現化し、消費者に提案していくことです。
考えてみれば、Amazonなどのレコメンド(提案)によって、さっきまで欲しいとも思っていなかった商品をついついカゴに入れてしまった経験などはよくあることです。言い換えれば、企業にとっては、欲しい物が何かを調査することよりも、欲しいと思ってもらうようどんどん提案していくことが、現代の熾烈なマーケティング環境では非常になっているということです。
こう考えると、記事で紹介されているモンベルの型破りなやり方は、真の意味での「ニーズ型」戦略に近いものだと捉えることができますし、むしろ徹底的・先進的なマーケティング手法だと見ることもできそうです。
今後、モンベルのような真の意味でのニーズ型の展開&戦略が、現代マーケティングのセオリーになっていくのかもしれません。
※ちなみに「シーズ型」は、企業が保有している技術(種)を起点にマーケットに浸透を計っていくやり方で、こちらも近年の急速なデジタル化が進む現代において重要な戦略です。福岡の繁華街・天神の路面店や郊外のショッピングモール店舗、それに加え九重連山の登山口にも店舗を構えるなど、確かにあちこちで「ここにもモンベルが!」と思った記憶があります。
その裏側は、時間をかけて地道に培ってきた『人との縁による出店が多い』との、目に見えない差別化要素で成立していたとは驚きです。
また、話題を呼んだ通学用リュックサック「わんパック」を始めとして、商品開発は『自分たちが欲しいものを作る』とのシンプルな考えが多くの方々にストレートに受け入れられる秘訣ですね。正に、凡事徹底。見習う点が多いです。モンベルはビジネスの研究対象としてとても興味深い存在です。いろんなことが「独自」で、どこかから借りてきたアプローチではなく、自分たちで考えて着実に実行されている印象を持ちます。機能的な製品もさることながら、手頃だけど安すぎないプライシング、年会費1500円かかるのに100万人も会員がいるメンバーシップなどです。流行の商品や最新のマーケティング手法に無頓着なマイペースの組織風土がモンベルの最大の競争優位性なのかも知れません。