【佐渡島庸平】なぜ今、仏教が必要なのか?
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これまでの代表的な「仏教マンガ」といえるものを参考までに挙げてみたいと思います。
① 手塚治虫『ブッダ』
すごく人間らしい、苦悩し、周りの人間を傷つけながら、当時のインド社会に翻弄されていくブッダが描かれました。10年に渡る連載作品で、創価学会がやっている潮出版でなければ、続けられなかったでしょう。
まず、この作品が日本の「仏教マンガ」としては代表でしょう。日本の仏教1500年の歴史で、「ブッダ」は生身の人間として日本人に親近感を持たれることはありませんでしたが、日本人の仏教観の変化にも少なからず影響があったように思います。
『火の鳥』も「鳳凰編」など、仏教の要素が大きいです。手塚治虫の描く仏教は、大乗的、さらに天台宗系というか、やはり日本仏教の範囲内ではあります。
② 坂口尚『あっかんべェ一休』
虫プロ出身のアニメーター、坂口尚による一休宗純の伝記をベースにしたマンガです。日本で最も人気のある仏教僧の1人、一休ですが、少なからず日本の創作作品の題材になってきました。
この作品の一休は、ひどく現代人的な人生についての苦悩を持っていて、世界に向き合い、恋愛し、俗な仏教界との格闘と離脱を繰り返します。
人間社会のしがらみからの離脱の象徴のようなものとして、一休は人気があるのでしょう。
③ おかざき真里『阿・吽』
今年連載が完結しましたが、空海の人生を描いた、まちがいなく傑作です。『応天の門』やアニメ『平家物語』もそうですが、最近のマンガ、アニメで、日本仏教が核となっているものが多い気がします。
日本仏教史上で「天才」ということでいえば、空海が随一でしょう。異常な語学の能力で、中国語とサンスクリット語を使って、国際的な仏教界の教学で、トップ水準で渡りあえたのが、日本史上では空海しかいません。大衆的な影響力も異常に大きく、各地の伝説、民話として根づいています。一個人として、日本仏教を構成する重要な一要素となりました。
天才・空海ですが、いつ死ぬかもわからないようなギリギリの無茶を繰り返して生きていた人で、その結果として、彼の構成に至る事績と影響があります。異常人ですが、その生き様そのものの美を描いたおかざき真理の作品は、「仏教マンガ」史上、1、2を争う傑作として完結しました。技術はどんどん進化していて、変化が激しい。しかし、人間自体はずっと変わっていない。
心について理解するのに、最先端技術ではなく、仏教がいいのではないかと考えるようになった。
ちょうど日蓮生誕800周年。日蓮を通して仏教を学んでみた。明日5月8日から漫画『あなたは尊い 残念な世界を肯定する8つの物語』が連載スタートです。
稀代の編集者・佐渡島庸平さんが、なぜ今、仏教漫画なのか?
なぜNewsPicksにも掲載したいのか? 多いに語ってもらいました。
佐渡島さんの作品の作り方の一つが、アジェンダ設定だと思います。コロナがあり、ロシアのウクライナ侵攻があり、相対的に落ちていく日本の漠然とした将来不安の中で、価値観の再定義をこの作品はしています。