Mac復活のカギ、チップ内製までの長い道のり
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Appleの売り上げがM1チップの内製化でこれほどまで急に伸びるとは予想していませんでした。しかし、考えてみれば当たり前なんです。性能が良く、消費電力も少ないチップなので、電池が長持ちするだけではなくグラフィック性能がサクサク動くため誰もが使いたくなるからです。
技術的には、IntelのようなCISCからArmのRISCアーキテクチャに変え、しかもArmコアの内部までいじるというスパコン「富岳」並みのCPU技術を使っています。2020年11月の最初のM1チップよりもさらに性能・消費電力を改良したM1 ProやM1 Maxを21年10月に発表し、今年の3月にはM1 Maxを2個並べるM1 Ultraと高性能・低消費電力のチップを次々と発表したため、Appleの自前半導体に対する本気度は本物であることがわかりました。もちろん製造にはTSMCの先端プロセスを使っています。
またApple PCのようにグラフィックデザイナーや芸術家が使うPCではGPUの強化が欠かせませんが、M1のこれまでの進化はGPUを強化したため、もはやIntelチップではできない領域まで先端的になりました。Imaginationのエンジニアを連れてきてグラフィックス機能を強化できたことがグラフィックスデザイナーを魅了したのだと感じています。大事なのは、一貫したプロダクトポリシー。
Macが発売された1984年に生まれた私は、もう20年近くMacを愛好し、周辺はApple製品ばかり。新しいものが好きなのではなくて、こだわりのある製品が好き。
チップを自前にする前から、すでにパワフルかつ効率的で、1日電池がもつラップトップはMac Book 以外にはなかった。それでも、さらにパワーと効率性を求めて、どうすれば良いかを考えた結果が自分たちでの開発。
それも、自分達で製造するのではなく、ファブレス。日本の多くの製造企業が言うところの自前主義とは違う。やるべきところを自社で行い、そうでないところは他でやる。
これだって、この規模の製造を正確にできるほどに発展したファウンドリがあって始めて成立する。その見通しだってリスクにまみれていたはずだ。
3-5年の中期計画では、このような根本的なイノベーションは起こせない。
トップ直下で、今の成果を求めない次の世代のチャレンジへの継続的な資本投下をし続けることが必要。
そして、なによりも、そのようなモノづくりの文化を社内に浸透させていることが大事。特に日本には、これは現場にあると私は思う。日本企業に限らず、多くの場合の問題は、トップがモノづくりとビジネスを両立できていないことだと私は思います。「Make or buy」は古典的な課題。日本企業の自前主義が批判されることは多い一方、外注化で強みを失ったIBMのPCや、内製化による強みで世界シェアを持つ企業もある。それが企業の命運を制するものであればどんなに大変でも自前でやらなくてはいけないというあたりまえのことを思い出させてくれます。