バルト3国、ロシア産ガス停止 政治的影響力を排除へ
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ロシアからの天然ガス、原油の輸出禁止を年末までに実現したいという気運が欧州で高まっていますが、隠れたテーマは原子力です。
EUは原子力発電を「CO2低排出エネルギー」に指定し、放射性廃棄物の処理プロジェクト等が確立されているならば、今後は公的支援の対象としていく意向です。
フランスで計画中のフラマンヴィル原発は総工費1.8兆円、英国で計画中のサマーセット原発は同3.6兆円と見積られ、ポーランド政府が導入を検討している小型原子炉(SMR: Small Moduler Reactor)にも2040年までに3.15兆円が投じられると試算されています。
ロシアがウラン鉱石生産に占める世界シェアは6%ほどで、大半は国内消費に回されています。しかし、ロシアの影響力が強いカザフスタンはウラン鉱石の産出で41%を占め、西側がより「頼れる」ウラン鉱石供給国である豪州・カナダ・ウクライナ(輸出はほとんど出来ていませんが)の3カ国の産出量を合わせてもカザフスタンの半分強にしかならない規模です(2020年、World Nuclear Association)。
ウラン鉱石産出トップ10か国には、ロシアの影響力が一定程度ある旧ソ連のウズベキスタンも含まれ、ロシアの影響力下にある国々はウラン鉱石産出の60-70%を占めます。
さらにロシアはウランの屑鉱石から再生する濃縮ウランの世界生産能力の43%を有しているとされ、制裁リストにロスアトムの子会社で濃縮ウラン生産を手掛けるTenex社を加える場合、世界経済への影響が深まる可能性があります。
福島の原発事故からウクライナ侵開始までの間、世界では57件の新規原発プロジェクトが始動しており、うち、ロシアが主導するプロジェクトは13件あり、しかも10件はロシア国外のプロジェクトです。
具体的には、エジプト、トルコ、中国、インド、バングラデシュ、パキスタン、ベラルーシ、ハンガリー、フィンランドでロシア発の原発プロジェクトが動いています。
ロシアは自力で資金準備ができない国に対しては建設費用の貸付も行っています。
クリーンエネルギーとして再注目される原子力発電にも、旧ソ連諸国に多く賦存するウラン鉱石という地政学上のリスクが横たわっています。