変わる「宇宙開発」勢力図ロシア制裁が引き起こすリスクと可能性
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> ISSの軌道修正やスペースデブリ(宇宙ゴミ)の回避はロシアの技術で成り立っている。
たしかに去年まではそうでした。ところが今年の2月だったかな、戦争が始まる直前、アメリカのノースロップの宇宙船「シグナス」によるISSのリブーストができるようになりました。これで、ロシアに頼らずに済むようになります。そして忘れて行けないのがSpaceXのクルードラゴンによるISSの人員輸送。これが戦争前に実現してなければ、本気でISSを人質に取られるところでした。ロシア製エンジンを使うアトラスVの後継のバルカンの打ち上げも今年に予定されています。もちろんアメリカは戦争を予期してこれらの計画を進めたわけではありませんが、結果論として、アメリカの脱ロシア化が紙一重の差で間に合ったという形になりました。
一方、ヨーロッパは宇宙開発でもロシアへの依存が強かった。今夏にロシアのロケットで打ち上げ予定だったESAの火星ローバーは完全に宙に浮きました。アリアンスペースも中型ペイロードはソユーズを使って打ち上げていましたが、これもどうなるのでしょう。
「漁夫の利」をもっとも得るのは、やはりSpaceXでしょう。ソユーズやプロトンへ行っていた西側からの打ち上げ需要の多くはSpaceXに行くでしょう。最有力の競争相手が西側マーケットから勝手に退場した形です。特に大型ペイロードはSpaceXの寡占状態になります。結果として、これまで進んできたコスト減が減速するかもしれませんね。宇宙開発の勢力図は確かに変わるが、それはロシアが宇宙市場から締め出されるという形。ロシアはソ連時代の遺産で低価格の打ち上げなどを実現していたが、それが無くなるということ。しかし、不可欠でも代替不可能でもない。