最高裁で逆転無罪の確率は0.02%──針の穴を通したCoinhive裁判 覆った“従来の法解釈”
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注目のコメント
マイナーな論点のように思えて、実は「ユーザの意図していない挙動」を行うJavaScript等を利用している全てのエンジニア、事業者に最高裁が寄り添った意義ある判決だと思います。情報社会への社会的議論・理解を促す、司法府によるルールメイキングとも言えます。
0. 前提
ウイルス罪の構成要件は、①反意図性、②不正性である。
1. ウイルス罪に関する従来の通説的解釈
・①反意図性が認められれば、原則として②不正性も認められる。
・例外的に、「社会的に許容し得るもの」といえれば不正性が否定される。逆に、社会的に許容されているといえなければ有罪となってしまう。
2. 今回の最高裁判決から導かれる解釈
・①反意図性と②不正性は独立した要件である。
・②不正性は、「社会的に許容し得ないもの」。つまり、社会的に許容しうるかどうか定かではないものでも、「社会的に許容し得ない」といえなければ有罪とはならない。
たとえば、「うーん確かに微妙だよなあ。広告とは違ってマイニングはユーザの視認性が低いし、オプトアウトも容易ではないし。どこまで認められるべきだろうか」という今回のケースは、「社会的に許容されているかどうか議論の余地あり」でした。しかし、「社会的に許容され得ない」とまでは言えない。つまり、有罪にはできない、ということになります。
この判決を導き出した平野先生や弁護団、意見書等を提出された方々に敬意を評するとともに、日本刑法学の権威である山口厚先生が裁判長としてこの判決を出されたことの意義深さを感じております。これは現代人全員に関わる重要な判決でした。
次の最高裁裁判官の国民審査で信任を入れたくなる判決。
“最高裁が判決の中で「Webサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは、Webサイトによる情報の流通にとって重要である」と示した”
消費者の立場に立ち過ぎると、消費者は便益を受けられなくなります。そのバランスが大事。「最高裁は、反意図性と不正性はそれぞれ独立した要件であり、反意図性はユーザーの心理的な面から、不正性はプログラムの動作やPCへの影響度といった物理的な面から客観的に判断するという枠組みを示した」
高木さんの解説のおかげで、大変よく理解できた部分。ユーザの意図だとして、そこはユーザのリテラシー次第でどうにでも変わる。また、どの程度の乖離があれば意図に反することになるのかという話にもなる。だから、反意図性は不正性につながるとの推定はしんどいわけで、これを独立した要素だと考えるのはとても理解がしやすい。