驚きの論文工場。中国発「フェイクペーパー」が増殖中
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私も経営学系の国際学会誌4つの編集委員を務め毎年何本も査読をしていますが、いまのところこうした問題は感じていません。自然科学の論文ではデータがすべてという意味で、逆にフェイクが作られやすいのは皮肉です。インパクトファクター重視は中国だけではなく日本を除くほぼすべての国(もちろん欧米を含む)の標準なので、これを変えることはほぼ不可能と思いますし、能力主義の否定につながります。とはいえ、この問題にどう対処すべきかは正直わかりません。研究者の倫理観とプライドに期待するしかないのですが…
ちなみに中国出身の素晴らしい研究者が多いことも付記しておきます。実際ここ20年でアメリカのトップスクールでは中国名の教授の数は大幅に増えています。競争主義の良い側面ではあります。中国発のフェイクペーパーが増えています。その裏で暗躍する「ペーパーミル(論文工場)」の驚くべき実態を紹介します。
解説してくれたのは、日本分子生物学会のオフィシャルペーパー「Genes to Cells」編集室のマネージングエディター、湯浅達朗氏です。
実験データを改竄・捏造したり、他人の文章を剽窃したりする個人レベル、研究室レベルの研究不正は言うまでもなく大問題ですが、ゼロから不正論文を作成する業者や彼らにお金を払って依頼する”研究者”が存在するとなると、もう問題のレベルが違う気がします。「論文を出さないと出世できないため、不正に走ってしまう」という仕組みが、インチキ論文請負業を成り立たせているといえます。
中国を含め世界中でそうなっていますが、論文を出版するほど給料が上がり、出世ができる、というKPIがあります。ただし、日本の場合は大学も終身雇用が多いので、そこまでKPIのために躍起になる度合いは低いです。
中国だと、病院でも、役所の一部でも、論文の出版が出世に役立ちます。
インチキ論文製造業(ペーパーミル)は、中国が生産地としても市場としても最大でしょうが、インドやケニアでもあります。ただ、中国の業者は非常にシステマティックで、商売がうまいといえます。
「今後、日本にもペーパーミルが進出してくるかもしれません」というのは、もう進出してきています。
学術雑誌に掲載される論文だけではなく、卒論、修論、博論から、大学の授業のレポートまで、国際的な市場があり、相場があります。卒論くらいだと、メルカリで買って提出してくる学生も増えています。
インチキ論文は、とにかく内容がインチキなので、実験もデータも架空のもので、それが新発見などとして流通すると、ニセ科学が医療や産業に取り入れられたりしてしまいます。学術的訓練を受けないまま大学を出る人間も増えます。そういう人間がまた、ニセ科学やフェイクに飛びつくようになるという悪循環が増大していきます。
できれば叩き潰すべきなのですが、おそらく、全世界の大学で叩き潰すのは難しいでしょう。信用できる研究を行っているのは世界の数十ヵ所の研究機関だけ、というふうになってしまうかもしれません。