医薬敗戦、バイオ出遅れ 21年の貿易赤字3兆円へ
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ちょっとトリッキーな印象を与える記事。貿易額の話なので、生産拠点が日本にあれば、海外発の医薬品でも黒字要因になる(AZのワクチンのアジア各国への提供など)。
医薬品市場における貿易赤字の拡大をもって「敗戦」というレッテルを貼るのはさすがにいかがなものか。医薬品生産はグローバル化しており、運搬コストも自動車のようなものと比較すると桁違いに低いので、そもそも生産拠点を各国に幾つも持つようなものではない。貿易黒字を達成するには、生産拠点の誘致が必要である。
とはいえ、海外発の医薬品の割合が大半になったというのは紛れもない事実ではあろう。データを見てわかるように、貿易額の合計値そのものが以前と比べて全く違う。日本の製薬産業が敗戦したというよりは、医薬品市場のグローバル化により海外の医薬品にアクセスするハードルが低くなった(海外の製薬企業が日本に進出しやすくなった)というだけで、日本の製薬企業の世界における影響力は特段変化しているわけではないように思える。
ただ確かに、医薬品開発に新しい技術を取り入れる力は、日本の弱みであるように思う。日本の製薬産業のバイオ医薬への取り組みが遅れていることは私が学生の頃が言われていたことだが、そもそも私が薬学部の学生だったころ、薬学部での創薬の意味合いは化学合成であり、アカデミアも新しい潮流についていけていなかったように思う。
なお日本はバイオ新薬だけでなくバイオ後続品(バイオシミラー)の分野でも遅れをとっている。抗体医薬はもはや過去の技術で後発品が参入している分野だが、バイオ後続品では韓国・中国企業が世界で存在感を発揮し、日本企業はローカルなプレーヤーでしかない。
さあどうするのか。
注目のコメント
「日本企業が海外に生産拠点を移したこと。問題は日本企業の創薬力が落ちたというもう一つの理由だ」・・・ かつて日本が世界をリードした家電製品から液晶、半導体、電池といったものまで、国内のビジネス環境の悪化で生産拠点が海外に移り当局と業界団体が積上げる煩瑣な規制がイノベーションを遅らせ、という点でよく似ていませんか (・・?
昔も今も日本の屋台骨を支える自動車も、自動ブレーキから自動運転に至る流れが規制されて立ち遅れ、世界がEVを押し立ててハイブリッド外しにかかる中、ハイブリッドに拘り続けて追い込まれる、といった可能性も皆無ではなさそうです。
時間を掛けてカイゼン・擦り合わせを繰り返せば勝てた時代と違い、バイオであれデジタルであれ、今は変化の激しい時代です。安心安全を旗印にした煩瑣な事前規制がイノベーションを阻害し「技術転換に乗り遅れた日本」を生んでいるように感じます。ことは医薬品だけにとどまらない・・・ (・・;本日12月12日の日経新聞朝刊1面記事は、「医薬敗戦 バイオ出遅れ」とのタイトルで、“医薬敗戦”の状況が取り上げられています。創業から10年のスタートアップ企業であり、徹底したDXによって年単位だったワクチン開発のスピードを飛躍的に高めたデジタル製薬企業であるモデルナは“医薬戦争の勝者”の象徴的存在。先週12月7日に刊行した『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』においては、第1章で、モデルナのコーポレートサイトで公開されている膨大なデータや資料への分析、その他徹底的なリサーチにより、モデルナの競争戦略等を詳しく分析・解説しています。さらに本書においては数多くの図表も使って、“医薬勝者”の競争優位を戦略論の視点から詳解しています。日本が、「医薬敗戦 バイオ出遅れ」の状況から脱却するためにはどうしたらいいかを提言した1冊でもある『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』。ご参考にしていただけたら幸いです。