日本発のアルツハイマー予防薬、発症前の人対象に国際共同治験
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認知症の克服は、我々人類の夢の一つです。しかし、残念ながらこれが夢の解決策になると信じるだけの根拠が今のところまだ十分には得られていません。
ここで紹介されているような薬剤は過去にも様々な知見が積み重ねられてきましたが、何よりの課題は、本当にこのアルツハイマー病の原因をアミロイドβに求めていいかという点です。原因なのか、結果なのか。
それが部分的にでも真実であれば、治験はうまくいくかもしれません。言い方を変えれば、この治験の成功により、アミロイドβ仮説に前進がもたらされる可能性もあります。
また一方で、費用対効果の議論も重要なものになるでしょう。使用される治療薬は抗体薬で、とても高額なものです。その費用をかけるだけの価値がある結果が得られるのかにも着目する必要があります。
これまでの開発の歴史については、こちらもご参照ください。
【解説】エーザイが開発した、「夢の治療薬」の実力
https://newspicks.com/news/4539937アミロイドベータは「原因なのか結果なのか」という議論をコメントしている方がいたので、一言。
『アルツハイマー征服』で書きましたが、このアミロイドカスケード仮説を疑う議論は、同じアミロイドベータを標的とするパピネツマブなどの先行する抗体薬が2010年代にすべて治験で認知に関する項目を達成しなかっ,たために出て来たものです。
しかし、その後
1)アイスランドのジーンバンクからアルツハイマー病になりにくい家系の人たちの遺伝子に、アミロイドベータを産出されにくくする突然変異があったこと
2)初期の抗体薬の治験は、PETが技術開発されておらず、そもそもアルツハイマー病患者ではない人が大量に入っていたこと
3)中程度、高度の患者をいれていたが、実はアルツハイマー病は発症の20年前からアミロイドベータの蓄積などの病変が脳内におきていることがDIAN研究などからわかってきたこと
などから、この議論は否定されていると考えてよさそうです。私自身も取材している途中までは、「原因か結果か」の議論 にとらわれていましたが、上記三点が取材で見えてくるにつれて、そうした議論は間違っていると結論しました。
アミロイドベータが発病のメカニズムにかかわっていることは確かです。
今回の岩坪威先生や、ハーバードのレイサ・スパーリングがやっている治験は、発症の前に、抗体薬を投与したらばどういう効果があるのかを見るということです。
発症の20年前から脳内に変化が始まっている、つまり病気が始まっているのだから、その段階で介入したらばどうなのか、ということなのです。
現在承認を待つ「アデュカヌマブ」は、先行したバピネツマブなどの治験の失敗を注意深くみて、PETによってMCI、軽度のアルツハイマー病患者に限定して投与し、一定の効果をあげた、ということになります。
ただし、記事の「日本発のアルツハイマー予防薬」というのは間違いで、スウェーデンのバイオアークティック社が開発した抗体薬の権利を2007年にエーザイが買い取って治験をすすめたというものです。なので本当は「スウェーデン発」。
これまでの開発の歴史についてはニュースピックスの科学担当の副編集長須田桃子さんにインタビューされた記事が参考になると思います。
https://newspicks.com/news/5556586高齢化とともにアルツハイマーは死因の上位を占める様になっていくと予想されています。アルツハイマーの研究は多くの研究者が取り組んでいる課題ですが、明確な原因すら分かっておりません。
その中で、脳内にアミロイドβの蓄積が起きているという事がわかり、研究が進められています。
ワクチンもそうですが、予防薬の治験は健常者に対して行われるため、求められる成果は非常に高くなります。どんな薬も副作用と効果のバランスが大事ですが、とりわけ健常者への予防薬は重大な副作用が起きないことが求められます。
いずれにせよ、国際治験にまで駒を進めるためには、その前段階の研究がいくつも行われており、そこで成果が上がっていることを示します。ハードルの高さからすると、大きな期待までは出来ませんが、結果が楽しみです。