【小林×村上】社外取締役は、裸の王様に「あなたは裸だ」と言えるかが問われる
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注目のコメント
「経営と執行の分離」(森さんのコメントにある通り、「経営の【監督】と執行の分離」の方がより正確かもしれません)は、言葉としては広く流通しているものの、いざ取り組もうとすると、経営者からは「経営者が現場感を失っちゃうのでは?」「自ら先頭に立って推進してこそのスタートアップでは?」といった懸念がしばしば聞かれます。
実際、そのトレードオフは一定は発生します。
その一方で、執行のど真ん中から少し立場を変えてみることで、いま自分たちが取り組んでいる事業の成長限界がどの辺りか、競争環境に変化が生じているか、といったことの解像度が上がることはままあります。
最前線の感覚と司令部の感覚をうまく行き来するのが新興企業にとって望ましいですが、それを経営者個人の感性やインテグリティのみに依存するのは過剰だと思います。
社外取締役は、経営者の視点の行き来をうまく促し、いま会社をどの視点でとらえるべきか(細部を見つめるアリの目線か、全体を俯瞰するトンボの目線か)を経営者に認識させることが大事だと思います。記事にある「経営と執行の分離」ではなくて、私は「経営の【監督】と執行の分離」の方が適切な表現だと思っています。
執行役(員)の集団である業務執行チームのことを普通は経営陣といいます(←コーポレート・ガバナンス・コードでも同じ考え方を採用しています)。そしてその経営陣を指名したり、株主の利益に即して問題がないか確認・監査するのが監督側である取締役会のお仕事です。
例えると、野球でいうところの選手 = 執行役(員)と球団経営者 = 取締役会(取締役と監査役)という理解でいます。選手のほうが球団経営者より高年俸であることは十分にありえますし、両者に上下関係はありません。本質的には、試合に出て勝負ごと(事業成長)を牽引し、それに応じた報酬や賞賛をもらうのは選手であり、球団経営者はそれを補助するコーチ役です。そして、あくまでも選手あっての球団ですけれど、球団収益が最大化するためには、強いチーム、スター選手は不可欠なので、最強のチームを組成する責任は球団経営者側にあります。ガバナンスで最も大事なのは社外取締役の人選。優れた社外取締役を選任するだけではなく、その個々の社外取締役が与えられた役割をしっかりと果たせるような環境、仕組み作りが欠かせません。
「裸の王様」の話をさせてもらっていますが、言うは易し、ある種独特な取締役会において「あなたは裸だ」などとエレファントインザルームを徹底できる人はそうそうはいません。
だからこそ、ボードカルチャーや仕組み作りが極めて重要だと思います。
H.Davidさんが指摘されている通り、日本の経済・経営・資本政策・ガバナンス、どれも根深くメインバンク制が影響しています。これは「ファイナンス思考」でも言及している通りです。
幸いなことに、スタートアップはメインバンクの影響が旧来型の大企業よりも圧倒的に低いのは無視してはいけない大きなアドバンテージだと思います。スタートアップを日本のガバナンスの最先端にすることができれば、日本全体の経営に大きな変革を促すことができるはずです。
日本がテクノロジー、終身雇用、低金利を武器にしていた時代は終わりを告げました。ガバナンスだけではいけませんが、ガバナンスも一つの日本の武器にしていければ、大きな産業創出ができる可能性は飛躍的に高まると信じています。
参考)社外取締役の人選について
https://note.com/201707/n/n133947016a28?magazine_key=m8b72b5a4a5d4