トヨタの成果主義拡大「6.5万人評価」の試練
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人事コンサルタントとして、注目したいのは新しい評価制度での分布比率です。
ABCDの4段階で、A10%、B30%、CとDで60%、という分布目標。めちゃくちゃ理にかなっています。
職場での成果測定を厳密に行うと、人間の能力は学校の通信簿のような正規分布ではなく、べき分布(対数正規分布)になります。
他の事例では、世帯年収もべき分布に従います。この分布の特性が、人事評価の解釈を難しくさせています。
実験で、「自分は平均的な社員よりも優秀と思うか?」という質問には、80%を超える人が「YES」と答えることが分かっています。
これ、実は「平均値」ではなく「最頻値(もっとも出現頻度が高い値)」と自分の能力を比較しているからです。
べき分布では、「最頻値」は「平均値」よりも必ず低くなるので、前出のアンケートでは、「最頻値」と自分を比べてどうか?と一般の人は理解するわけです。
数人突出した能力の人がいると平均値は上昇しますが、人間は自分より能力の高い人については評価しにくい傾向にあるので、アンケートの結果はどうしても前出の傾向になる訳です。
ということで、トヨタの新しい評価制度では、Cを最頻値と解釈し、Dを最頻値よりも下位の評価(ただし、比率はさほど高くない)であることを明示し、このゾーンは昇給しない旨を宣言したことに大きな前進があると思います。
この比率を使うと、人件費の適正配分と総額抑制にも効果的なのも、今後の競争激化に対する準備として素晴らしいです。評価結果を労使間ですべて開示するというのはよいですね。明快な評価基準をつくって、評価結果も開示することで、意外とよいことは、周囲の評価される行動を理解し真似できるようになること。
そして、とにかく物差し作りと評価者のトレーニング、この2つが制度に魂を込められるかの分水勉ですね。良い流れだと思います。評価結果をクリアに明示してフィードバックするには、「上司」は当然にその概念や制度の本質を正確に理解するとともに、最終決定までのプロセスに能動的に関わらざるを得なくなる。「私はAで提出したんだけど、調整でBになっちゃった」などという雑で無責任なことを言わせないよう、キッチリと評価者としてのトレーニングをすると共に、評価決定の議論に参加させて頂きたいですね。
それと、もう少し言うなら「評価結果を元にどうするか」。評価制度は昇給や賞与決定のための「ツール」ではなく、能力開発のための、最近なら「エンゲージメント向上」のためのシステムであるべき。評価した後の動きにも、大きくチャレンジして欲しいですね。注目しています。