【論文PICKS】あとは人間で試すだけ。不老薬の「最有力候補」
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新型コロナのワクチンが出来ても実は高齢者は救えない。
人生100年時代の人生戦略は本として売れた。政府もそれに乗っかった政策を検討してる。しかしそもそも設定が嘘で、実は簡単にはやってこない。
これらは老化の科学を知る人間からは相当の精度で予想できる残念な真実です。
ただし、現状では、です。
老化研究でブレークスルーが起きれば、これらは引っくり返せるのです。
科学に基づいた本物のアンチエイジング技術の創成に向けた動きが、世界中で起こりつつあります。そんな研究者達の活動の一部を記事では紹介します。理化学研究所研究員の伊藤孝先生による寿命に関する論文紹介です。
今日紹介のNature論文は3000回近く引用されているキーペイパーです。基本的に全ての研究は過去の研究を礎に行われます。「巨人の肩に乗る」という表現をされることも。したがって論文発表する際は過去の論文を逐一引用しながら記述するのが必須です。
有名な雑誌に乗った!という時点で一定の評価はしてよいものの、もっと大事なことは他の人によって再現が取れるか、新しい研究の礎になっているかです。引用数の多さはその論文の重要性・信頼性・注目を判断する重要な指標の1つです。TwitterでいうRTに近い感覚かも。
この研究では3つの独立した研究機関で実験が行われたとありました。これは確からしさを高めるために非常に努力している研究スタイルです。”生き物は生もの”なのでとても変数が多く、実験環境が変わると結果が同じように再現できないことがしばしばあります。最近注目を集めている腸内細菌が原因かも知れませんし、微妙な温度、湿度の違い、餌や水の違いに起因するかも。とにかく何が予想外にインパクトの大きい変数になるか特定するのが難しいわけです。異なる研究機関で同じ結果が出せたというデータは非常に強力です。
老化もまさにその変数の多さの最たる例、それをできるだけ抑えるために基礎研究段階では変数をできるだけ減らして、シンプルな測定からはじめるのだと思います。寿命というのはシンプルに測定できるかつ、多大なインパクトがある指標です。感染機会が少なく餌水を自由に取れるネズミにとって寿命を決める最大の要因は何なのか非常に気になります。どの臓器、どのシステムの障害が死にいたらしめるのでしょうか。死因を決めるというのはすごく難しいことだと思うのですが、老化研究分野ではどんな試みがなされているか興味があります。薬投与群と非投与群をそれぞれ解剖して比較すると何かわかるのかなぁ。
ラパマイシンは免疫抑制剤として使用される一方で、ノバルティス関連会社によりラパマイシンと同じような効果を持つmTOR阻害剤を投与すると抗体価が上がったという話が気になりました。その仕組みがわかると何か新しいメカニズム発見につながるかも知れません。製薬会社のビジネスとしての戦略の話も非常に参考になり、世に出る薬は何重もの障害をくぐり抜けてきたのだなと思いを馳せました。ラパマイシン、犬、代謝、ケトン体などの研究で著名なマット・ケーベルライン博士のところへ留学されていた伊藤さんの記事。
マット・ケーベルライン博士はMITのレオナルド・P・グアレンテ博士のお弟子さんで、私の留学先だったHarvardのデイビット・シンクレアもレオナルド・P・グアレンテ博士のお弟子さんなので、伊藤さんとはある意味同じ流れを組む研究者仲間です。
伊藤さんのテーマにあるようにラパマイシンは最も老化に効果があることが証明されている薬ですが、「人での実証」「特許からのビジネスへの展開」に課題が残されています。
老化をビジネスにする際に現在注目されているのはペット産業で、人に使うほど厳しい規制がなく、また業界のニーズと市場性が高いことがあります。
また、特許に関してはアメリカresTORbioのようにラパマイシンを改良した新しい薬剤として開発を進めることでこれをクリアしようとする動きがあります。ただし、「老化」の薬ではFDAに承認してもらうことが出来ないので、何かの「疾患の薬」として人で試す必要があります。resTORbioの場合、パーキンソン病や呼吸器に照準を絞って開発を行っています。残念ながら先日、呼吸器に対する試験は基準をクリアできなかったようですが、老化の薬は人で使用する場合、「何の疾患の薬」として承認してもらうかが肝心なポイントになります。
その点、サプリメントは対象疾患がボヤ〜っとしてるので厳しくありませんが、効果も市場性もニーズもボヤ〜っとします笑。