理系が外資コンサル・金融へ行く理由
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日本の理系人材の活用について思うところがあったので、長文を書きました。
仮説です。近年の日本の科学技術力の低下の一因は、就活における「外資系ブーム」にあるのではなかろうか?
理系のトップ人材が、マッキンゼーなどのコンサルや、GSなどの金融に流れていってしまっている。一昔前なら、ソニーや東芝や日立にいって日本の技術を底から支えた人材だ。
個人の選択の問題と、社会の問題を分けて考える必要がある。
個人の選択としては、日本の優秀な理系人材がコンサルや金融を選ぶことに完全な合理性がある。
しかし社会としては、希少な理系人材が、本当に必要なところに行っているのだろうかという問題がある。私(2004年修士課程卒)がいた研究室では、私より上の先輩はほぼ企業の研究開発職かアカデミックの研究者で、私より下の世代はほぼコンサル/金融/商社でした。
才能の有無もまあありますが、根本的には向いているかどうか。
外資系の魅力、お金、プライド、様々な因果の説明をすることはできますが、たくさんの人がこの時代に流れていった一番大きな因果は、文科省の大学院重点化政策の失敗じゃないでしょうか。
佐藤郁哉著「大学改革の迷走」p.274によると、大学院生は90年代に急激に増加し2011年までに約3倍の27万人に。博士入学者数はピーク時2003年の1.2万人から2018年の6000人に半減し、在籍者数は横ばいに。
https://twitter.com/nuribaon/status/1216315347759841281?s=21
結局この時代に研究職を志した人は、先輩達の背中をみて憧れを失い、それまでの情熱を失ったらカネとプライドくらいしか欲しいものが残らなかった。
そして、そもそも才能ある人は研究者になるべきなんだろうか。物理学系の分野の話だが、最近の博士課程の学生はアカデミアと就職を平気で天秤にかけている例が散見される。このようなことは私の時代には考えられなかった。博士卒での一般企業への就職例がなかったわけではないが、そのまま研究者への道を進むより(情報が自然には入ってこないので)困難に見えたし、サイエンスをやめるのはなんだかネガティブな空気があった。この分野はアカデミアのポストが極端少ないので、私としては学生の選択肢が増えて、その中から気軽に選べことは良いことだと思っている。
ただ、教員は大変な時代に突入したなと思う。優秀な学生を引き止めておくために、また競争的資金を獲得するために研究がいかに魅力的なのかをあらゆる場所で客観的に伝える努力が必要だ。好きだからと言う主観的な理由だけで研究を自己満足的にやってさえいれば良い時代はとっくに終焉を迎えていると思う。